つくば沿線パワーに期待 TXアントレプレナーパートナーズ代表・村井勝氏④

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むらい・まさる 1937年大阪府出身。関西学院大学卒、米カリフォルニア大学大学院でMBA取得。米国IBM入社(後に日本IBMに転籍)。91年コンパック社長就任。98年退社後、数多くのベンチャー企業を育成。2009年11月よりTXアントレプレナーパートナーズ代表。

現在、TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)代表として、ベンチャー企業の育成を行っています。TXとはつくばエクスプレスのこと。この沿線には東大、千葉大、東京理科大、筑波大のほか、国立の研究所が20以上、民間の研究所も70以上あります。つくばと秋葉原の距離は約60キロメートルで、ちょうど米国シリコンバレーと似ています。

TEPは会員組織となっています。起業家予備軍やベンチャー企業のアントレプレナー会員が約100、そのアントレプレナー会員に対して投資を行う意思のあるエンジェルが約20、専門的技術や知識を提供するサポート会員が約80、スポンサー会員が約10という構成です。

実は、TEPを設立する前、ベンチャーキャピタルの知り合いからは「やめとけ。労多くして益なしだから」と忠告を受けていました。過去のベンチャーブームのときに、先端技術の集積地であるつくばエリアが注目されたのですが、ことごとく失敗に終わっていたからです。

ここでロールモデルを作りたい

しかし、何で失敗したかを検証してみると、ベンチャーキャピタルの人たちの多くは、役員会に顔を出すことはあっても、ベンチャーの方々と一緒に作業をしていませんでした。キャピタリストといっても会社員なので、失敗しても自分の懐は痛みません。優秀な方が異動で離れていく場合もありました。

TEPのエンジェルは個人で、アーリーステージといわれる、ベンチャー企業が誕生する初期のプロセスを支援しています。うまく成長しそうだとなれば、今度はベンチャーキャピタルを紹介するわけです。

TEPでの活動を通じてはっきり言えるのは、研究室ですばらしい製品を造る会社はたくさんあるということです。ただ、優秀な人材が造ったこうした製品や知恵は、チームでシェアしないと商用化できません。そのために専門家を投入するのも、TEPの大切な役割です。

米国ではベンチャーを支援する組織が地域ごとにあり、過去にベンチャー企業などで成功した人が中心となって支援しています。その地域で、というのが大切なんですね。

これから、このエリアに住んでいるエンジェルやサポート会員を増やしていき、1社でも2社でも成功事例を作りたい。そうすれば、刺激を受けて、日本各地で同じような動きが進むかもしれません。日本全体をどうこうしよう、と大声で言うのではなく、仲間と一緒に、まずはこの地域を元気にする。私はここでロールモデルを作りたいのです。

週刊東洋経済編集部
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