NHKが手掛けている「国際共同制作」の最新事情 知られていない日本固有の物語を世界に届ける

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同時に、プレゼンテーションを行う相手を探していくのですが、そのための場としては6月にフランスで行われる「サニーサイド・オブ・ザ・ドック」というドキュメンタリーを中心とした制作者会議や、10月に行われるMIPCOMというコンテンツ見本市などがあります。こうした国際会議に制作者と一緒に出向いて、プレゼンテーションを行います。世界各地の放送局と打ち合わせをしていくなかで、それぞれの地域のトレンドやニーズを把握し、企画書を修正していくんです。

国際共同制作に参加してくれるパートナーが決まると、そこからは、その地域と日本、両方の視聴者に気を配りながら制作を進めていきます。例えばフランスであれば、もう少し詳しい背景説明が必要だとか、科学番組であればヨーロッパの科学者を登場させられないか、といった具体的な要望が上がってきますので、その意見を番組にどう盛り込むかをさらに相談していきます。

世界の視点を取り入れることで、より多くの視聴者に楽しんでいただける番組にしていくことが私たちの目指すところです。

国際共同制作をする必要性とは何か

国際共同制作となる番組企画は、日本の公共メディアであるからこそ知りえた物語、それゆえに、ぜひとも世界の人々と共有したいと思える物語がほとんどです。日本の科学者による新発見、芸術文化の最高峰、あるいはNHKだけが入手しえた貴重な映像などです。例えば、東日本大震災のような未曾有の災害の記録や、そこから得た知見や学びを世界と共有したいという思いがあります。防災減災の知見だけではなく、復興への物語も含めて、世界と共有することで助かる人たちがいるのではないかという思いが取り組む原動力となることもあります。

NHKだけがアクセスできたものの例としては、2013年にNHKスペシャルで放送した「世界初撮影!深海の超巨大イカ」があります。NHKエンタープライズ自然科学部の制作チームが長年取材を続けていくなかで、どうやら小笠原諸島周辺にダイオウイカが生息しているらしいという情報を入手しました。ダイオウイカは特にヨーロッパでは伝説の生き物とされていたもので、生きた姿で撮影できれば世界の人々も驚くだろうと、国際共同制作を呼びかけたケースです。その後も「深海」を舞台にした冒険は「ディープオーシャン」シリーズとして今に続いています。深海で撮影するためにNHKが開発したさまざまな撮影機材やノウハウを世界と共有していくことも、国際共同制作を進めるモチベーションの一つになっています。

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