NHKが手掛けている「国際共同制作」の最新事情 知られていない日本固有の物語を世界に届ける

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日本の体験を世界へという例では、東日本大震災の直後にNHKスペシャル「メルトダウン〜福島第一原発、あのとき何が」を制作しました。世界中が関心を持っている出来事についてNHKが入手しえた最新情報を正しく世界に発信するということも国際共同制作が持つ役割の一つです。長期的な視点に立った被災地の復興を世界に伝えていくこともしています。

その時々の世界共通の関心事、あるいは時代を超えた人類共通のテーマを、国際共同制作のドキュメンタリーで数多く手がけてきました。それは地球や宇宙、人類史、恐竜、あるいは戦争などさまざまです。

そういった人類の普遍的なテーマに取り組んできた一方で、世界の人たちがまだ知らない日本固有の物語というのもあって、例えば私自身がプロデューサーとして2022年に手がけたノーナレスペシャル「わたしの小学校」は、ニューヨークと東京に拠点を置くプロダクションと共同制作しました。ドキュメンタリー監督の山崎エマさんがNHKカメラマンとタッグを組み、日本の公立小学校を1年間にわたって撮影し、児童たちがどのように成長を遂げていくかを記録した物語です。

コロナ禍で、先生たちが小学校をどう切り盛りしていたのか、そのなかで子どもたちがどのように学び、共同生活を歩んでいったのかを中心に描いています。コロナ禍の小学校では、さまざまな授業や特別活動のうち、何を残して何を中止するのか、自由と制限のバランスをどう取るのか、教育の本質を見つめ直す検討が重ねられ、結果として日本の教育の強みと課題が浮き彫りになったと感じています。先生たちと子どもたちのひたむきな姿を通して、世界の人たちが教育について話し会う機会になればとの思いから、この物語を世界に出していった経緯があります。この番組にはフランステレビジョンとフィンランド公共放送も共同制作に参加し、関心の高さを実感しています。

国際共同制作というと、大型番組のイメージがあると思いますが、今後も、日本のインディペンデントの制作者の方たちが紡ぐこうした物語を、NHKがパートナーとなって世界に届けていきたいと考えています。

国際共同制作のメリット

NHKは、もちろん日本の視聴者のために番組を作っているので、それだけでは海外の視聴者には物足りない、あるいは基礎的な知識が違うためにもう少し補足が必要だというような場合があります。そのようなとき、海外の放送局の要望を取り入れながら一緒に作っていくことができる、言ってみれば「カスタマイズできる」というところが、国際共同制作の大きなメリットだと思います。共同制作パートナーがどのような枠で放送したいのかという要素もあります。例えば深夜のドキュメンタリー枠なのか、あるいはプライムタイムの家族向け情報バラエティなのか、相手が最大の効果を生み出せるよう、アイデアを出し合いながら作っていくこともできます。

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