メカニックの人に「どんなメガネ?」と聞かれたので、私は、「オレンジ色のフレームのメガネです」と答えました。
メカニックの人はシートを外し、懐中電灯を当てて探しています。5分くらい探した後に、「マダム、どうしてもありません」と言いました。でも、飛行機に乗るときには確かにかけていたわけですから、ないはずはありません。
「この座席の下ですよね」。メカニックの人は指さしながら、シートの下を見せてくれました。するとそこには、ちゃんと私のメガネがあったのです。
私が、「これです」と言って取り上げると、メカニックの人はあんぐり口を開けて、とても驚いた様子でした。彼は、ふざけていたわけでも、冗談を言っていたわけでもありません。ただ「見えていなかった」ようなのです。
「視野に入った=見えている」ではない
目の前にあり、視野にしっかり入っているのになぜ「見えていなかった」のか。
それは彼が予想していた「オレンジ色のメガネ」と、私のメガネが全然違うものだったからです。私は「オレンジ色のつるのメガネ」と言いましたが、そのつるはとても細くて、オレンジ色が目立つものではありませんでした。
彼のイメージする「オレンジ色のメガネ」はきっと、つるが太く、全体がオレンジ色のものだったのではないでしょうか(かけるのに勇気がいりそうなメガネですが)。
まったく違うものを想像していたために、目の前にあるのに見えていなかった。認知の力はときに、そうした形で働くものなのです。
皆さんも、似たような経験はないでしょうか?
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