思い込みは敵か味方か?“認知バイアス”が私たちを守る理由とは?「バイアスを持たないようにしよう」という努力は無駄である

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「バイアス=持たないほうがいいもの」と考える人は多いかもしれません。しかし、バイアスが仮にいっさいなくなったとしたら、私たちは一日を過ごすにも困ってしまうことになるでしょう(写真:hellohello/PIXTA)
最近、「認知バイアス」という言葉を目にする機会が増えました。多くの場面で、認知バイアスはエラーや差別の原因であり、なくすべきものだと語られています。しかし、認知心理学者の今井むつみさんは、バイアスもまた、人間の種としての生存戦略の一部であると述べています。それはどういうことでしょうか? 私たちがもつバイアスの特徴と役割について、多角的に見ていきます。
※本稿は今井むつみ氏の新著『人生の大問題と正しく向き合うために認知心理学』から一部抜粋・再構成したものです。

【バイアス① 】思い込みなしに、世界と対峙できるのか?

前回お話しした「代表性バイアス」以外にも、人には、ほんとうにたくさんの「思考バイアス」があります。ここからは、人の思考の特徴として、バイアスについてお話ししていきます。

多くの方は、もしかしたら「バイアス=持たないほうがいいもの」と考えているかもしれません。しかし私の考えは違います。

バイアスはある面でたしかに、論理的・合理的な思考から私たちを遠ざけてしまったり偏見を助長したりすることもあります。しかし、バイアスが仮にいっさいなくなったとしたら、私たちはその日一日を過ごすにも困ってしまうことになるでしょう。なぜなら、世界にある情報が多すぎるからです。

私たちは今、つねに膨大な情報に囲まれています。情報は「あればあるほどいい」のでしょうか。そうとは限りません。

私たち人間はつねに、無意識のうちに情報の取捨選択を行っています。たとえば道路を歩いているだけでも、看板や道路標識、行き交う車や歩行者など、周囲は情報の山です。

しかも周囲の状況は刻一刻と変わり、あなた自身が前進すればまた状況が変わります。その膨大な情報から、たとえば「信号が赤になった」とか「車が曲がってきた」など、必要な情報だけを選び出し、それ以外の多くの情報を捨てています。

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