「最近の若者は…」過剰に一般化する人の深刻盲点 都合よく情報を拾ってしまう「認知の偏り」の罠

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それなのに、誰か特定の人の行動を見て、「アメリカ人は〜」「日本人は〜」「20代の女性は〜」「これだから男は〜」「最近の若者は〜」などと決めつけてしまいがちです。

特に、そこに感情的なものが関わってくる場合には、過剰一般化をより起こしやすくなります。例えば「◯◯人」に対する印象が悪い国では、自分の意見もそれに同調するようにつくり上げられることが多いのです。自分の感情だけでなく、世間的なものもここには含まれます。

あるいは、私たちは、ある1人の人についても、たまたま目についた特徴だけを拾い上げて、「〇〇さんは〜だから」と過剰一般化してしまうことも珍しくありません。

たまたま一度、やむにやまれぬ事情があって遅刻をしただけなのに、自分の気持ちが急いているときは、「この人は時間にルーズだ」と思ってしまったり、ちょっとした細かいミスを指摘したら「些細なことにこだわる面倒くさい人だ」と思われてしまったり。

子どもたちの間でこの「過剰一般化」が行きすぎて、いじめにつながることもあるのです。

そうしたときに、「決めつけるのはよくない」「相手の気持ちを考えよう」と言ったところで、誰の心にも響くはずはありません。

人間は都合よく情報を受け取ってしまう

私たちが知識や情報を受け取り、理解し、記憶する際、何かしらの偏りが必ず生じています。自分に合わない情報は、そもそも頭に入ってきません。また、スキーマによって、捉えているものは人によって変わります。だから、指摘されるまで気づかないのです。

『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「エコーチェンバー現象」は、SNSなどで同じような意見を見聞きすることで、自分の意見や思い込みが強化されることです。しかしこの現象は、ネットが出現するはるか以前から存在しています。私たちはつねに自分たちの見るもの・聞くものにフィルターをかけており、「見聞きしたくないものはブロックする」「思い出したいものを想起する」という都合のいいことをしているのです。

目に入っていても見ていない。耳に入っていても聞いていない。様々な情報の中から、自分に都合のいいものだけを無意識にピックアップして、それがすべてだと思い込んでしまう。

こうした認知の性質が、「言えば伝わる」「話せばわかる」を支えるものでもあり、また妨げるものでもあるのです。

今井 むつみ 慶応義塾大学環境情報学部教授

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いまい むつみ / Mutsumi Imai

慶応義塾大学環境情報学部教授。1989年慶応義塾大学大学院博士課程単位取得退学。94 年ノースウェスタン大学心理学部Ph.D. 取得。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。主な著書に『ことばと思考』『学びとは何か─〈探究人〉になるために』『英語独習法』(すべて岩波新書)、『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマー新書)など。共著に『言語の本質─ことばはどう生まれ、進化したか』(中公新書)、『言葉をおぼえるしくみ─母語から外国語まで』(ちくま学芸文庫)、『算数文章題が解けない子どもたち』(岩波書店)などがある。

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