「(洋室では)寝ているだけです。テレビも見る機会があれば見るという(笑)」
男性は笑いながらそう話す。ソファの一角と洋室にあるベッドで生活の大半を過ごし、仕事に行く際は押し入れのモノをゴソゴソと探る。一人暮らしなのでとくに不便を感じることもなく、15年間その生活を続けてきた。
生ゴミ屋敷のほうが作業は楽
ゴミ屋敷の様子から住人の生活が透けて見えてくる。この男性の場合、はじめはリビングを中心に生活をしていたが、ゴミが溜まってくるにつれてベッドのある洋室へと次第に移っていった。
ついにリビングのドアも開かなくなり、テレビを見るとき以外は洋室で過ごすようになった。だから、枕元には焼酎の瓶がズラリと並ぶようになったのだ。洋室の押し入れには腕時計が並べられていた。おそらく、仕事に行く際に身につけるモノをここに集めていたのだろう。
ゴミ屋敷の清掃をする際は、こうした住人の行動を頭の中で思い浮かべているとイーブイ社長の二見氏は言う。
「ゴミ屋敷は部屋の中で使っている場所とまったく使っていない場所にはっきりと分かれるんです。大切なモノはよく使っていた場所にあることが多いので、ゴミの中に紛れていないか、より注意して見るようにしています。
案件によっては依頼者さんがすでに他界されていることもあります。アルバムの中まで見るようなことはしませんが、写真が出てくると“こんな感じの人やったんや”と生前の生活を想像してしまいますね」(二見氏)
今回作業に入ったスタッフは7名。まずは玄関、洋室、和室のゴミを搬出し、その後にふすまを外してリビングの片付けに取りかかる。エレベーターのない3階からの運び出しはかなりの重労働だ。二見氏によれば、「生ゴミでいっぱいのゴミ屋敷のほうが作業自体は楽」なのだという。
「この部屋は新聞紙とチラシがとにかく多かったんですが、長い年月をかけて積み重なることによってそれらが圧縮されていくんです。とくに生活の動線になっていた場所は押し固められていて、掘り起こすと倍くらいに膨れ上がる。だから、ゴミ袋の数もなかなか予想できないですし、生ゴミよりもかなり重量があります」(二見氏)
紙類のゴミが溜まり出すと厄介である。物理的に重いので外に捨てに行くことはもちろん、不要なモノをまとめて分ける作業すら億劫になり、あっという間に積み重なっていく。
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