「成果を出せない上司」は発酵を学ぶといい理由 答えのない不確実な時代のチームマネジメント
リチャード・E・ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』(ダイヤモンド社)の訳者・村本由紀子さんの要約によると、「東洋人のものの見方や考え方は『包括的』であり、西洋人のそれは『分析的』である」としています。
そして、「包括的思考とは、人や物といった対象を認識し理解するに際して、その対象を取り巻く『場』全体に注意を払い、対象と様々な場の要素との関係を重視する考え方」とし、「分析的思考とは、何よりも対象そのものの属性に注意を向け、カテゴリーに分類することによって、対象を理解しようとする考え方」としています。
つまり、書籍のタイトルの通り、東洋人は「森全体を見渡す」思考、西洋人は「大木を見つめる」思考の様式を持っているということです。
この思考は、「発酵」にもつながっています。先ほど、日本の発酵は複数の微生物の相互作用と説明しました。具体的には、麹菌が酵素を生産し、その酵素で原料が分解され、分解された原料を乳酸菌が食べることで乳酸菌が産出され、産出された乳酸によって酵母が活躍できる環境が整い、酵母の活動によってアルコールや香りの成分が産出されます。
いわば、醸造容器の中に擬似的な生態系・エコシステムをつくり上げる発想法です。そのような、それぞれの「微生物の関係性に注目した発酵の形式」は、まさに、東洋人の「森全体を見渡す」思考にフィットします。
対して、発酵に関与する微生物が1種類だけ、例えば、酵母の活動に注目して、いかに酵母を増殖させていくかに注目していく西洋の発酵の思考は、「大木を見つめる」思考法と言えます。
他の日本の文化と「発酵」の共通点
さて、ここで、いくつかの他の日本文化と「発酵」の共通点を見ていきましょう。
「天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも」阿倍仲麻呂
国語の教科書の常連であり、小倉百人一首にも採られている有名な短歌です。この短歌と発酵の共通点は何だと思いますか。それは、制限の中に、小さな宇宙や世界を再現しようとしていることです。