「成果を出せない上司」は発酵を学ぶといい理由 答えのない不確実な時代のチームマネジメント
日本の「発酵」は、複数の微生物を用いて調和を図るというものでした。つまり、「発酵」というタンクの中に、複数の微生物を投入し、そこに小さな生態系(エコシステム)をつくり上げるという発想です。
短歌も、31文字という制限の中に時間や空間の広がりを詰め込みます。阿倍仲麻呂が、遠い異国の中国にて月を見て、故郷の三笠の山を思い浮かべて詠んだ歌です。この31文字の中に、中国と日本、そして月という空間的な広大さや、遠い幼少期の思い出と今の自分という時間的な広がりを見事に詰め込んでいます。
このように、制限の中に小さな自然を再現し広がりを感じさせるという手法は、日本芸術が得意とするところです。
盆栽や箱庭なども、小さな鉢や庭という空間のなかに、自然を再現し、そこから雄大な広がりを感じさせる芸術です。茶室も限られた狭い空間のなかに、軸や花、あるいは茶道具や茶菓子などによって、その日に表現したい世界観をグッと濃縮させます。その世界に、招待する側である亭主や、招待される客人も取り込まれ、すべてが調和した、時間、空間が完成します。「複数の要素の関係に着目する」。これは、日本文化を理解していくときに、軸になるコンセプトです。
「発酵」と組織論、発酵は環境を整えること
この「複数の要素の関係に着目する」日本の発酵の概念を、組織論の視点から眺めてみましょう。
以前、懇意の味噌メーカーの方が、「人間は、麹と、水と、塩を混ぜることしかできない、混ぜたものを味噌に変えるのは微生物しかできない」とおっしゃっていました。多くの醸造メーカーの方は、「微生物が活動しやすい環境を整える」という表現をします。