何光年も離れた「恒星への旅」は実現可能なのか NASAの専門家が本気で考えた星間旅行の課題

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全地球測位システム(GPS)を構成する衛星は、初めて行く場所でもうまく辿り着かせてくれるし、相互依存的になった世界と世界経済を維持するにはもはや必要不可欠である。今や地球近傍の宇宙は、私たちの日常生活と幸福に不可欠だ。

多くの提唱者たちが、当然の次のステップは、地球と月のあいだの領域、シスルナ空間〔訳注 「cislunar空間」。「こちら側の」を意味するcisと、「月」を意味するlunarisというラテン語から作られた、地球と月の軌道の間の空間を指す言葉〕の開発だと確信している。

米国のNASAをはじめ、他の国々も、近い将来人間を月に送ろうと計画している今、シスルナ空間における新たな製品やサービスが登場するに違いないという期待がある。地球軌道で起こったのと同じように。

だとすると、やがて議論は太陽系全体へ、そして最終的には太陽以外の恒星へと広がっていくだろう。

人間の知識を拡張するため

私は1人の科学者として、このちっぽけな太陽系の外側も含めて、宇宙を探査することには、経済や有形の利益とは無関係な正当な理由があると信じている。遠い宇宙には何があるのか、そして宇宙はどのように成り立ち機能しているのかをもっとよく知るため、というのがそれだ。

21世紀において私たちの生活を成り立たせ続けるために使われているすべての技術は、過去の時代に、さまざまなものに対してこれと同様の根源的な疑問を問いかけた科学者たちから生まれたものである。

彼らが問いかけた当時、そのような疑問に明白な経済的利益や用途は必ずしも存在しなかっただろう。「人間の知識を拡張すること」は、それ以外のどんな理由にも引けを取らない真っ当な理由なのだ。

このような考え方には異論があるし、人間が宇宙に進出し、やがて太陽以外の恒星にまで到達することを考えたときに持ち上がる厄介な疑問もあれこれ存在する。

星間旅行は可能だ――ただ猛烈に困難なだけだ。人類に、この困難を引き受ける覚悟はできているだろうか?

(翻訳:吉田三知世)

レス・ジョンソン 物理学者、NASAテクノロジスト

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Les Johnson

物理学者。Graphene: The Superstrong, Superthin, and Superversatile Material That Will Revolutionize the WorldSolar Sails: A Novel Approach to Interplanetary TravelThe Spacetime Warなどの多くの著書がある。NASAの初めての惑星間ソーラー・セイル宇宙ミッションや、NEA Scout、ソーラークルーザーの主任研究者。

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