ありがたいことに、これまでとは違う新しい物理学を準備しなくても、自然は人類に超高速星間旅行を実行させてくれるようだ。
核融合を使った原子力推進、反物質推進、そしてレーザー推進のいずれの方式に基づいた推進技術も、物理的に可能なようである――とはいえ、必要な規模のシステムの設計は、今の私たちの能力ではとうていできそうにないが。
人類が星間旅行という究極の旅に本当に出発するのなら、まずは太陽系の至るところに人類が居住しなければならない。それが達成できても、星間旅行を実施するにはさらに、新しいさまざまな技術が必要だし、過去の過ちを繰り返さないための探査倫理の枠組みも新たに構築しなければならない。
そして、かつてヨーロッパの大聖堂の建築を可能にした、未来を見通す思考力が必要だ。なにしろ、今始まるプロジェクトには、それが何世代も先まで完了しないことを踏まえた大局的な思考が求められるのだから。
なぜ宇宙を探査するのか?
それに加えて、「なぜ?」という疑問がある。「私たちはなぜ遠くの恒星まで旅しなければならないのか?」だ。さらに言えば、それは「そもそも私たちはなぜ宇宙を探査しなければならないのか?」という疑問でもある。
宇宙時代が始まってから最初の50年と少しが経過した今、地球近傍と地球軌道に沿った宇宙領域の探査と開発に関しては、説得力のある理由がいくつも存在し、それらの理由はほぼ万人に受け入れられている。
気象衛星のおかげで、気象学者たちは数日先、数週間先の天気をかなり正確に予報することができる。さらに、ハリケーンやサイクロンの経路を予測するのにも役立ち、人命を実際に守ってくれている。
通信衛星は世界を結び付け、世界各地で何が起こっているのかを瞬時に伝えてくれる。通信衛星がテレビ放送の電波信号や携帯電話の信号を中継してくれるのに加え、通信衛星を多数つないだ大規模ネットワークによる、地球上の至るところでアクセスできるブロードバンド・インターネットの提供が始まっている。
スパイ衛星によって、世界各国は互いの軍事活動を監視することができ、奇襲攻撃がほとんど不可能になったおかげで、平和が維持されている――核兵器で武装されたこの世界において、これは戦略的安全の重要な一部である。
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