遠い恒星へと旅するのに必要な驚愕のエネルギー 光速の50%を超える速度で飛行するとしたら

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5
拡大
縮小
宇宙へ飛び立とうとするロケット
探査機を必要な速度まで加速するのには、とてつもない量のエネルギーが必要となります(写真:Maximusnd/PIXTA)
民間企業による宇宙飛行が実施されるなど、宇宙はかつてないほど身近になっている。しかし、太陽系を離れた恒星への旅についてはどうだろうか? 私たちはいつか、遠い星まで出かけ、そこに住むことも可能になるのだろうか?
今回、NASAのテクノロジストである物理学者が、光子ロケットや静電セイル、反物質駆動、ワープ航法など、太陽系外の恒星への旅の可能性について本気で考察した『人類は宇宙のどこまで旅できるのか:これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

どれほどのエネルギーが必要なのか?

人類は宇宙のどこまで旅できるのか: これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー
『人類は宇宙のどこまで旅できるのか: これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

遠い恒星への旅を可能にするために必要な各種の技術を紹介する前に、恒星間の途方もない距離を飛行するのがいかに困難かを、「ミッションを妥当な期間で完了するために必要な速度まで探査機を加速するのにどれだけのエネルギーが必要か」に注目してお話ししておくことは役に立つだろう。

また、「妥当な期間」という言葉にも再定義が必要だ――それは、あなたが考えておられるような長さではないだろう。

そしてさらに、ときどき持ち上がる、倫理上の問題にも触れておかねばならない。

ある宇宙船が100%の効率でエネルギー源を推力に変換できたとしても(実際には不可能)、1キログラムのもの――現在打ち上げられている最小の宇宙機の質量と同程度――を光速の10分の1(0.1c、秒速約3万キロメートル)まで加速するには約450兆ジュールのエネルギーが必要である。

次ページ加速だけでなく減速も考慮する必要がある
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT