他方、「リッチモンドアカデミー」という社内研修においても、現場スタッフが主体となるサービス姿勢が大切にされている。
「最初はお辞儀の角度や言葉遣いなど、いわゆるマナー研修でした。でもだんだんと、『あなたならこういうお客様に対して何ができる、何がしたいか』を場面場面で考えてもらい、『そういうことをしていいんだよ』と背中を押す内容に変わっていきました」
それぞれの顧客に対して最適なものを、最も最前線にいるスタッフ自ら考え、行動できる環境が整備されているのだ。
設備面もまたしかり。たとえば、1995年の開業から導入している自動精算機の使い方も独特だ。訪れるゲストのニーズは、丁寧な接客を希望する人、時間のない人、誰にも接触せずに部屋に行きたい人などさまざまである。
そのため、自動精算機の横にスタッフが立ってゲストを観察。もてなしを希望する人は、あえて自動精算機を使わずにスタッフがカウンターでチェックインし、急いでいる相手には挨拶だけ。接触を避ける人にはほぼ声もかけないなど、個々のニーズを見極め対応している。
「無難なホテル」だから選ばれる
ひるがえって、サービスを受けるゲストにとってはリッチモンドとはどんな存在なのか。
2015年、リッチモンドは「ゲストの本音を聞くこと」を目的とした会員向けインタビューを実施した。24人の募集に対して1000人もの応募があったというその場で最も多かった声が、「リッチモンドは無難なホテル」というものだったそうだ。
「無難というとネガティブに聞こえるかもしれませんが、その意味を掘り下げると、『上司の出張の宿泊先に選んでハズレがない』『知らない土地でも安心して泊まれる』『部屋が狭すぎず朝食がおいしい』『きれいで価格も手頃』……など、ポジティブな意味合いだったのです」と宗像氏。
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