養老孟司×ヤマップ春山対談「こどもを野に放て」 思い通りにならない自然と折り合いをつける力
自然の中に身を置くだけで、こどもたちは十分学んでいる
春山 現代の日本の教育において、自然体験はそれほど重要視されていない、どちらかというと脇に置かれてしまっているような気がしています。
特に最近では、英語やプログラミングなど、早い段階から知識を詰め込む傾向がより強くなっているのではないでしょうか。
養老 明治時代に日本が学校教育をはじめたときは、野育ちのこどもたちを集めて、「おとなしく、じっと座っていなさい」という教育でした。
ところが今の子は、テレビやパソコンのモニターを見て、おとなしくじっと座っている方が多いわけでしょう。そうすると、学校で先生の話を聞いているだけで受け身になりがちです。
そういう明治以来のおとなしく座らせる教育で、どこまで学習というものが成り立つのか、疑問です。
結局、こどもを集めて静かにさせておくのが楽だからということだと思いますが、元来、こどもはじっと静かにしていられない。だから、それを無理やりやらせているという意味では、ほとんど「虐待」ではないかと思います。
極端なことを言うようですが、学校はいわゆる「遊ぶ」ところにしてしまって、学業は家でやるということにしてしまった方がいいくらいではないですか。