「もともと当社はだしにこだわっており、冬場に合わせたフェアとして、2017年に『くらだし丼シリーズ』を実施しました。丼にだしをかけて食べるメニューとともに、オプションでだしのみの提供もしていたのですが、フェアが終わった際に、お客さまからだしに対するかなり多くの意見をいただき、だしを商品化することにしました」(辻さん)
シンプルなだしがあるなら、みそ汁もあっていい。水産物の価格が上昇して商品も値上げせざるをえない状況にある中で、こだわっただしを味わえるメニューを少しでも増やそう。こうした思いから、純味噌汁の発売に至ったと辻さんは話します。
あおさやあさりといった定番のみそ汁には負けるものの、売れ行きは極端に少ないこともなく「予想通り」(辻さん)で、みそ汁の根強い人気を感じさせます。
みそ汁のベースにもなっている、くら寿司のだしは、昆布やかつお、煮干しやさば節など7種類の魚介を使い、店舗で仕込んでいます。オペレーションの面からフリーズドライを検討したこともあるそうですが、だしの文化を重視している社長の声で、店舗で仕込む方法に決まったそうです。
「昨今は家庭などでだしをとる機会が減っています。こうした和食の文化を当社が残すことで、子どもたちなどにおいしさを知ってもらおうと思い、取り組んでいます。5リットルのだしを仕込むのにも30分ほどかかりますし、当社が厨房で行っている調理では、最も時間がかかる作業です」(辻さん)
だしは「ラーメン」「うどん」のベースにも
こうして仕込んだだしは、みそ汁だけでなくラーメンやうどんのベースになって、くら寿司のサイドメニューを支えています。ちなみに「くら出汁」は、仕込んだだしを基にアレンジしたうどん用のだしを提供しており、だしそのものではないそうです。
くら寿司では、店舗仕込みのだしとは別に、茶碗蒸し用のだしも存在します。茶碗蒸しはサイドメニューの中でも圧倒的な人気メニューであることから、こちらは国内に3つある自社工場で仕込み、店舗に配送しているそうです。
筆者の大学時代、みそ汁は、不足している野菜分を補う存在でした。取りあえず安い野菜を買って、何でもみそ汁に入れて1日に2~3杯は食べていたくらいです。次第に、みそ汁は具がメインだと認識するようになっていました。
そのため、くら寿司が具のない純味噌汁を提供していると知ったときは衝撃を覚えました。しかし、実際に食べてみると満足感が高く「だしも具になる」と感じさせられた1杯でした。さすが「無添」をうたうくら寿司、余分なものをそぎ落とした引き算の美学です。
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