1.68%--国内上場企業における従業員持ち株会の株式保有比率《気になる数字》

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自己株の陰に隠れて存在感が薄れていた従業員持ち株会だが、ここにきて再び株式保有比率を高めつつある。

東洋経済「大株主調査」では決算(第2四半期決算を含む)を迎えた国内の上場企業に対して、大株主の動向調査を実施している。直近の半年間(2010年11月~11年4月)において従業員持ち株会の保有比率を調べたところ、1年前に比べて0.11ポイント上昇し1.68%となったことがわかった。

従業員持ち株会とは、社内で作られた組合を通じて従業員が自社の株式を購入する制度を指す。購入にあたっては会社から補助が出ることが多いが、株式を購入するタイミングは自由に決められない(強制的に給与から天引きされる)場合がほとんどだ。自社の株式を長期的に保有する安定株主の確保や、従業員に対して株価上昇へのインセンティブを付与するために用いられる。現在では、従業員持ち株会が存在する会社は3389社(全体の93.8%)に上る。

00年前後には1.89%あった従業員持ち株会による保有比率は、01年の自己株式(金庫株)解禁によって相互株式持ち合い解消の受け皿としての役割が薄れたためか、07年には1.45%まで低下していた。自己株式の保有比率は解禁から順調に増え続け、直近では2.21%に上る。しかし、リーマンショックや東日本大震災などで有事の際の手元資金を温存する傾向が強まり、足元では2年連続で処分額が取得額を上回っている(東証調べ)。

一方、従業員持ち株会は、株式市況の低迷によって買い増しが容易になったこと、創業家一族の節税策として従業員持ち株会に株式を譲渡する方式が注目されたことから、直近では1.68%にまで保有比率を回復させた。

また最近では、信託やSPV(特別目的会社)が市場から大量に買い付けた自社の株式を定期的に従業員持ち株会に売却するスキーム(いわゆる日本版ESOP)を導入する企業が増えている。こうした信託やSPVは、株主名簿上は「○○信託銀行信託口」などの名義で記載され、従業員持ち株会にも自己株式にも含まれないケースがほとんどだ。そのため、信託等を含めた実質的な従業員持ち株会による保有比率は1.68%を上回っていると考えられる。

従業員持ち株会による保有比率は、海外投資家の持ち株比率22.2%、個人株主の29.1%(いずれも東証調べ。対象は10年度の本決算会社)に比べると決して大きいとはいえない。しかし、企業にとって従業員持ち株会の拡充は自社に友好的な安定株主を確保するチャンスでもある。従業員持ち株会による保有比率の回復は今後も続く可能性が高いだろう。
(荻原 和樹 =東洋経済オンライン)

従業員持ち株会・自己株式の保有比率推移

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