当初、海外移住の場所として、マレーシアを選んだのは、単純に経済的な理由だった。
マレーシアが日本人に向いている理由とは?
「子どもが3人いるし、高校で欧米に留学させるとなると、お金が大変だなと考えていました。でもマレーシアなら東京での保育園代くらいでまかなえる。当時は、月に5万~6万円を保育園に払っていましたから。先にマレーシアで英語を教えて、あとから日本に戻り逆留学させたほうが、コストが安いなと考えたのです」
ところが、だんだんマレーシアを知るうちに、この国が教育移住に向いていると思い始めた。
「タイにいる中国人って、もうほとんどタイ人なんですよ。タイ語しか話せない中国人もいます。米国で育った日本人も、米国人になってしまうと思います。ところが、マレーシアに来ると、インド人はインド人だし、中国人は中国人のままです。なぜだろう? と調べてみると、この国はそれぞれの民族ごとの教育や宗教が許されて、共存しているんですね。共存の仕方が上手で、外国人には居心地がいい。ここなら、日本人が日本人のままいても問題ないだろうと思いました」
中村家は日本語教育にこだわっている。家の中は日本語のみ。ときには日本語での日記も書かせる。怒るときには、思っていることをきちんと言わせるなど、会話の運び方には気を使っている。実は日本人学校に入れようと思っていた時期もあった。しかし、何も日本的なことを学校で学ぶ必要はないのではないかと思い始めた。
「自分自身、学校からの影響って少ないんですよ。それに自分が日本の学校に合わなかったのに、それを子どもに薦めるのもどうかな?と思います」
マレーシアに来てから、子どもたちはすぐにローカルの幼稚園に入る。当初、幼稚園で行われていた詰め込み式の暗記教育に驚いた。算数に英語、中国語、マレー語などでワークが毎日ある。これはあまり意味がないなと思ったが、長男はすんなり馴染んだ。長女は嫌がったため、遊び中心の保育園に移り、二人ともインターナショナルスクールに進学した。実は、学校のことはあまり把握していない。
「もともと、学校に何かサービスを求めるのは間違っているのではないかと思います。躾は家で、学校に教えを請うところだと思っているので」
しかし、家では極力放っておくという。
「たとえば、1+1は2だけど、放っておいたら、1+1はなんだろう?ってずっと考えるでしょう? そういう考える自由が必要かなと思っています」
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