高校中退「元不良」がマレーシアを選んだ理由 共存の仕方がうまく外国人は居心地がいい

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中村家では、学校の勉強だけが大切ではないと考えている。「それに、うちは子供には、理性のほかに感性、野生も身につけてほしいと思っています。だから、塾に行っている暇はありません」。

マレーシアでどうやって野性を育てる?

とはいえ、外遊びの機会が少ないマレーシア。ここでどのように野性を育てるのだろうか。

もともと、スケボーが大好きな一家は、スケボーパークのそばにこだわって住まいを選び、週に3~4回は通う。ストリートカルチャーを通じて現地の友達を作り、ヒップホップや水泳なども積極的にやらせている。一戸建てに引越してからは、庭で畑を作り、畑仕事を覚えさせている。

現在は、校内に小川やツリーハウスのあるジャングルのような敷地を持つ学校に興味津々。できれば、子供たちをそこで学ばせたいと考える。でも子どもが将来的にずっと言うことを聞くとは思っていない。

「私自身も親の言うことを聞かなかったですからね。でも親も不良ですから、こちらもガンガン仕掛けてやる!って思っていますよ」

マレーシアの社会は日本の田舎に似ているという。「いきなりピンポンして家にやってきたり、モスクを中心に、家族と地域の人のコミュニティーがまとまってます。だから、居心地がいいんでしょうね」

サラリーマンだった夫は会社を辞めて一緒に来たが、英語が話せるのは、家族の中で芙美子さんひとり。そのため、移住当初は争いが絶えなかった。

「移住して1、2年は、ものすごいストレスで、夫と喧嘩ばかりしていましたが、最近ようやく夫も私もお互い馴れ合いをやめ、独立できるようになってきました」

今後マレーシアで長く生活していくために、マレーシアの総合サイト「マレーシアマガジン」を立ち上げた。「社会経験がなかったので、毎日のように主人に怒られてました」と振り返る。

現地在住の日本人と仕事をするうち、日本人の多くが自分のパターンを壊されるときに怒ることに気がついたという。また、争いの原因の根本は、ほとんど「自分と違うから」ということに気がついた。それからは、グループには極力入らないようにしている。他人と離れてひとりになれば、誰も嫌う必要もなくなってくるからだ。

「みんなそれぞれ自分のフレームがあって、誰かがそこに入ると怒り出す気がします。けど私はそのフレームがなくて、誰でも出入り自由なんです。ついつい好奇心のまま動いてしまうんですけど。自分も楽しんで周りも楽しませたい。今の所、それしか生き方が解らないのです」

先のことは決めていない。マレーシアにずっといるとは考えておらず、将来、ほかの国に行くことも考えている。「新しいところにいったら、楽しいじゃないですか」と笑う。「海外暮らしって、びっくりするような体験があるんですよ。いまは移住してしばらく経ったので、視界がバンと大きく変わることはなくなりました。それでも何か新しい事を発見し、過去の自分とさよならし続けるのは楽しいです」と締めくくってくれた。

野本 響子 ジャーナリスト

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のもと きょうこ / Kyoko Nomoto

東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。安田火災海上保険(現損保ジャパン)を経てアスキー入社。『MAC POWER』(アスキー)、『ASAHIパソコン』『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリー。『僕がアップルで学んだこと』『企業が『帝国化』する』(ともに松井博著/アスキー新書)編集。著書に『いいね!フェイスブック』(朝日新聞出版)、『マレーシアの学校の○と× アジア子連れ教育移住の第一歩』(Kindle)ほか。1990年代半ば、仲良くなったマレーシア人家族との出会いをきっかけに、マレーシアの子育てに興味を持ち、現在クアラルンプール郊外に長期滞在中。趣味はオーケストラでの楽器演奏。

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