7~8月の予約は順調、計画上回る利益に意欲 稲盛和夫・日本航空会長

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いなもり・かずお 1932年生まれ、鹿児島県出身。55年鹿児島大学工学部卒、京都の碍子メーカー、松風工業入社。59年京都セラミツク(現京セラ)設立。社長、会長を経て97年から名誉会長。84年DDI(現KDDI)を設立し会長、2001年最高顧問。10年2月から日本航空会長。
昨年1月の会社更生法適用時には、二次破綻の懸念も叫ばれた日本航空(JAL)。ところが、東日本大震災という想定外の事態にもかかわらず、目下の業績は堅調で、資金繰りもむしろ余裕があるほどだ。外資とのLCC(格安航空会社)合弁設立の報道など攻めへの転換のムードもある--。JALの変化は本物か。破綻後に会長就任、立て直しに奔走した稲盛和夫氏に聞いた(インタビューは6月下旬に実施)。

社員は様変わりした

――JALは、震災の影響もあって4月の国際旅客数が前年同月比47%減、国内旅客数が同32%減でした。足元の需要動向はどうなっていますか。

確かに4月は大きく落ち込んだが、5月になって国内線の回復は顕著であり、国際線も国内ほどではないが回復している。原発問題などがまだ収束していないので、訪日外国人顧客は戻ってきていないが、今後はさらによい方向に変わっていくだろうと思っている。7月、8月と予約は順調に回復し、前年実績に近いお客様が確実に戻ってくる。搭乗率も前年実績を上回るだろう。現在は非常に楽観的に見ている。

――JALは減便など昨年来の大リストラで供給量自体が25%減っていますね。そのため、心配された業績は意外なほど堅調です。

4月は赤字だったが、5月に黒字転換した。6月にその黒字幅がもっと大きくなることは確実だ。

もともと今期は会社更生計画(同手続きは今年3月で終結)の2期目として750億円強の営業利益計画だったが、夏の予約状況を考えると、この数字は十分に達成できる(前期営業利益は1884億円)。需要が戻ってくるだけでなく、4月から運用を開始した部門別(路線別)採算システムの効果も大きい。

――部門別採算システムは、稲盛会長主導の下、京セラの経営手法を導入したとして注目されていますが、詳細を教えてください。

ちょうど今日、(同システムを基とした)5月の実績と6~7月の予想を含めた業績報告会を終えたところだ。子会社を含めた収益部門と、整備やグラウンドハンドリングなどコスト部門の全百数十部門の損益や経費について、三日間にわたって幹部やそれぞれの担当責任者、スタッフが議論する。チェックの対象は、家賃やお茶代など万円単位の経費までに及び、非常にきめ細かい。

この制度を敷いて3カ月。自分で言うのも何だが、社員は様変わりした。自ら数字をチェックして行動を起こしている姿を見ると、たいへんうれしく思う。

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