春秋航空の上海便は、円安に伴って急速に増加してきた訪日旅行客(インバウンド)に支えられ、95%を超える高い搭乗率を記録している。中国人の個人旅行者が中心で、上海から茨城空港へ飛び、茨城空港から片道500円(搭乗者限定割引)のバスでJR東京駅まで移動するというルートが定着したことによる効果だ。低運賃で移動できるLCCの中国路線が、首都圏の成田空港や羽田空港に乗り入れていないことが大きい。上海から東京へ最も安く移動できるルートとして定着している。
為替相場や中国経済の動向次第の部分はあるものの、成田や羽田に中国のLCCが乗り入れていないうちは、春秋航空の上海線は堅調な推移が続くだろう。ただし、定期便がこの1路線のみというのは厳しい。茨城空港にとっては、スカイマークの国内線は何としても死守したいはずだ。
ただ、県の予算投下という「劇薬」以外に、茨城空港発着のスカイマーク便の利用客を大きく増やす有効な手だては見つかりにくい。
運賃で勝負も難しい茨城空港
茨城空港から新千歳空港までの航空券運賃を例に分析してみよう。7日前までに購入が必要な割引運賃「前割7」を利用した場合で、片道1万2400円程度。筆者が5月下旬に利用した札幌発茨城行きは前日購入で片道1万6400円だった。
仮に茨城空港が県内だけでなく、千葉や東京など首都圏から利用客を引っ張ろうとしても条件は良くない。確かに羽田-新千歳で見ると全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)といった大手航空会社は普通運賃が3万円以上するが、早期購入割引で購入すれば1万円台で買える。更に、ジェットスター・ジャパンやバニラエア、ピーチ・アビエーションといった成田空港を発着する国内線LCCと比べると、相対的に割高だ。
東京駅と茨城空港を結ぶバスを利用すれば片道500円だが、道路が空いていても茨城空港~東京駅間は1時間40分、道路が混雑していれば2時間以上かかることも珍しくない。都心から遠いといわれる成田でも東京の中心部からの所要時間は電車、バスで1時間前後だ。首都圏から茨城空港を使って新千歳や福岡、神戸に行く最大のメリットをあえて挙げれば、1300台が停められる無料駐車場ぐらいだが、それにしても時間がかかる。
そうなると茨城空港へのアクセスが便利な茨城県内からの集客に期待したいところだが、実は、逆に茨城県内から成田空港へのアクセスが便利になったばかり。6月7日に圏央道の神崎インターチェンジ(千葉県神崎町)と東関東自動車道と繋がる大栄ジャンクション(千葉県成田市)間の9.7kmが開通したことだ。
たとえば、つくば市内から成田空港までは従来に比べて約30分短縮され、45分(つくば中央インターから成田空港まで)でアクセスできるようになった。茨城空港は駐車場無料で利用者からも好評ながら、成田のLCCは便数も多く、早めに予定を決めれば格安の運賃で利用できることもあり、使い方次第では駐車料金を払っても成田空港を活用したほうが割安なこともありえる。
まさに茨城空港は、先行きを楽観視できない状況にある。今回、茨城県が打ち出したプレゼントキャンペーンで呼び込む利用客を根付かせる、あるいは口コミなどで茨城空港の評判を広げてもらえるか。まさに「賭け」ともいえる取り組みだ。これが単にバラマキで終わってしまうのならば、国際線LCC専用空港になってしまう可能性は否定できない。
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