名古屋中心部からざっと40キロメートル、電車で約40分。愛知県常滑市の伊勢湾側の海上に浮かぶ人工島に位置するのが、中部国際空港だ。「セントレア」の愛称で知られる中部圏で最大の空港が、今年2月に開港10周年を迎えた。
中部地方はトヨタ自動車グループをはじめとして、日本の代表的な企業が点在する。その経済圏と世界をつなぐ「ハブ空港」を目指す狙いで設置されたものの、今の姿は当初のもくろみとは大きく外れてしまっている。開港からほどない2005年度こそ1235万人(国際線532万人、国内702万人)の利用者を記録したが、そこがピーク。2009年度以降は同1000万人を割り込んだままだ。
セントレアの開港効果はわずか数年で霧消
国際線利用者に限ってみても2007年度の556万人をピークとして、ここ数年は年間450万人前後で低迷してしまっている。セントレア開業前の旧名古屋空港(現:県営名古屋空港、通称:名古屋小牧空港、愛知県豊山町)における2004年度の国際線旅客数は449万人だった。つまり、セントレア効果は最初の数年間のみだったといえる。
「10年前は欧米への直行便がたくさんあったのに、すっかり不便な空港になってしまった」。名古屋在住で北米を中心に海外出張の多いビジネスパーソンは嘆く。
セントレアが開港した2005年は、「愛知万博」がちょうど開かれた頃。世界的に名古屋が注目されていたこともあり、セントレアには欧米系航空会社が数多く乗り入れ、日本航空(JAL)のパリ線、エミレーツ航空のドバイ線なども運航された。2007年度には国際線は週354便(1日平均約50便)もあった。
ところが、状況は急悪化する。2008年秋のリーマンショックに伴うその後の急激な景気後退だ。国際線利用者とともに路線数も縮小。2013年度で見ると週290便(1日平均約41便)まで減った。現在、27路線の国際線のうち欧米路線(ホノルル除く)はフランクフルト(ルフトハンザドイツ航空)、ヘルシンキ(フィンランド航空)、デトロイト(デルタ航空)の3路線のみ。大半はアジア路線だ。
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