がん患者になった医師が教える「余命宣告」の意味 体力が低下しつつ、がんが進行したらどうなるのか

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がん患者さん特有の体力の落ち方を知っておくことはとても大切です。
やりたいことをしっかりできる可能性を知る一方、あとで困らないように準備をしておくことの意義を理解できるはずです。

医師の余命予測は当たらないことが多い

あまり考えたくないことではありますが、体力が低下しつつ、がんが進行したらどうなるのか。余命を宣告される未来も今後可能性がないわけではありません。このときの心もちについて、私の経験からお話しさせていただきます。

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まず、余命を宣告されたときに、多くの患者さんは戸惑います。毎日が死へのカウントダウンのように感じてしまう人も少なくありません。

しかし、実は残された時間の予測は医学的にとても難しいものです。がんを専門にしている医師でも、予測は3分の1しか当たらないと言われているほどです。

医師のなかにはこれまでの経験などから平均的な期間をおっしゃる方もいらっしゃいますが、それはあくまで平均です。

予測よりもっと長くなる方もいれば、短くなる方もいます。 実際、「余命半年」と言われても「3年生きる」人も現実にたくさんいらっしゃいます。

ですから、あまり医師から伝えられた数字に振り回されず、長くがんばる、具体的な数字にとらわれずに生きることが大切だと伝えると、がん患者さんの表情はパッと明るくなります。

医師と一緒にいまできることをしていくという姿勢が大切です。最後に、進行の恐怖と向き合っているのはあなただけではありません。 がん患者さんは皆一緒です。あなたは一人ではありません。どうかこのことも、忘れないでください。きっと力になってくれるはずです。

廣橋 猛 永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長、緩和ケア病棟長

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ひろはし たけし / Takeshi Hirohashi

2005年、東海大学医学部卒。三井記念病院内科などで研修後、09年、緩和ケア医を志し、亀田総合病院疼痛・緩和ケア科、三井記念病院緩和ケア科に勤務。14年から現職。病棟、在宅と二つの場で切れ目なく緩和医療を実践する「二刀流」緩和ケア医として、これまで3000人以上の患者の死に関わる。2023年に甲状腺がんに罹患していることが判明し、現在は闘病しながら緩和ケア医としての活動を行う。著書に『がんばらないで生きる がんになった緩和ケア医が伝える「40歳からの健康の考え方」』(KADOKAWA)『素敵なご臨終 後悔しない、大切な人の送りかた』(PHP研究所)がある。

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