1500年の伝統「京都・西陣織」まもなく消滅するか 世界も憧れる「日本の伝統工芸」の"最大の危機"

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現在の、織元の「職人の後継者育成」における課題は以下のように整理できる。

職人の後継者育成における「4つの課題」

【課題1】「技術の継承に残された時間」が少ない

現在、「織元の職人の平均年齢は70代」と言われるまで高齢化が進んでいる。

各織元は需要減退の最中、生き残りに必死で、「後継の育成」へ投資をする余裕がない時期が数十年続いた結果だ。技術の後継に残された時間は、年々、少なくなっているのだ。

【課題2】徹底された分業制のため「多数の後継人」が必要

職人は細分化された一つの工程を極める専門工であり、それぞれの作業場も隔離されている。

たとえば、10の工程であれば10人の後継者が、技術の100の工程があるならば100人の後継者が、伝承に必要になる。分業がされているほど、それを後継することは難しくなるのだ。

また職人らは、自分の持ち場に対しては極めて高い責任感を持つのだが、その反面、他の工程や全体に対しての興味が下がる

過去に、源兵衛氏は職人を一同に集めて、次の作品の製造全体について自由闊達な議論の場を用意したことがあったが、職人から出てきた言葉は「早く“自分が何をするか”を教えてほしい」というものであったそうだ。

職人
西陣織の職人(提供:誉田屋源兵衛株式会社)
【課題3】「教えられた経験」がないので、教えることが難しい

「高齢の職人は誰かに教えられた経験がないので、誰かに教えることが難しい」という問題もある。

「かつては、父親の家の仕事場での作業を息子が毎日見ており、それで仕事を覚えた」と源兵衛氏は言う。

また、昔と違い、子どもが親の仕事を継ぐのが当然であるとか、若者が丁稚奉公に入るなどの考えは、現代には馴染まない。

家庭内手工業が色濃く残る伝統工芸が抱える課題である。

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