コンサルが「次に目指す」仕事"PEファンド"の正体 傾いた企業を"診断し治療する"経営再建の医者
例えば、2024年2月にアウトドア用品大手のスノーピークがMBO(Management Buyout)を発表し、同社を支援するアメリカのPEファンド・ベインキャピタルがTOB(株式公開買い付け)を実施したのは記憶に新しいところです。
その他にも、食料品・日用品の小売りチェーンである西友、雑貨販売のFrancfranc、栄養ドリンクのアリナミン製薬、温浴施設の大江戸温泉物語、喫茶店のカフェ・ベローチェ、珈琲館、カフェ・ド・クリエ……、これら有名企業の株主はすべてPEファンドです(2024年2月現在)。
PEファンドは「次に目指す」場所
戦略ファームのコンサルタント、投資銀行バンカー、M&Aアドバイザー、商社マン……。ビジネスのハイパフォーマーの間で、PEファンドは「次に目指す」場所として知られています。
とはいうものの、その実態を伝える情報はほとんど表に出てきません。新卒の学生を採用しない業界のため、一般に情報が出にくい背景もあり、「知る人ぞ知るトップキャリア」として有名な職業なのです。
では、その実態とはどのようなものでしょうか? 知られざるPEファンドの世界について説明していきましょう。
PEファンドの仕事をごく簡単にまとめると、以下のようになります。
「投資家から集めたファンド資金を企業に投資して、一時的に対象会社のスポンサーになり、経営改革を推進して企業価値を高め、自走できるようにする。そして、株式公開や保有株式の売却によってリターンを得て、その会社を次のスポンサーにバトンタッチする」
この役割を対個人の仕事に例えるなら、ケガをした人を診察・治療し、リハビリテーションを実施しながら日常生活へと戻していく医療機関のようなイメージです。
企業を立て直し、雇用を維持し、場合によっては新たな雇用を生み出す。企業の再生や再成長が、地域の活性化にもなり、産業の発展にもつながっていく。ひいては日本経済の成長にも貢献しています。
個人のやりがいの域を超えた、社会的意義のある仕事といえるでしょう。
この業界で働く人たちにこの仕事の特徴を聞くと、「総合格闘技」に例えられることが多いようです。
PEファンドで働くプロフェッショナルには、コンサルティングファームでのコンサルタントスキルをはじめ、投資銀行やFASでのM&Aアドバイザリースキル、総合商社での事業スキルなど、個々の専門的職種としての卓越したスキルを複数にわたって持つことが必要とされているからです。
そこでは、自分の能力を最大限に発揮し続けなければ、即敗者となってしまう、まさに真剣勝負の頂点ともいうべき熱い戦いが繰り広げられているのです。