コンサルが「次に目指す」仕事"PEファンド"の正体 傾いた企業を"診断し治療する"経営再建の医者
PEファンドの仕事は、やりがいももちろんですが、大変さも普通の仕事の何倍にものぼるといわれます。しかし、それは勤務時間や仕事量といった「物量」の感覚ではなく、複雑さや成し遂げるべき「クオリティ」が何倍にもなるという感覚です。
PEファンドで働くプロフェッショナルは、株主の立場に立ち、なおかつ投資先企業の経営陣と議論しながら、トップの視点で企業価値を上げていく役割を担います。
その手段として、プロジェクトをいくつも立ち上げて、リーダーを社員から選び、その人々を通じて、すべてのプロジェクトを同時に動かしていきます。
こうした仕事は、マネジメント力や人間力をはじめとするハイレベルな技量が必要とされるため、そう簡単に実践できることではありません。
投資して間もない時期には、対象企業には「ファンドの人なんて嫌い」「話の意味がわからない」などと、露骨な態度で抵抗を見せる社員の方々がいることもあります。
投資先企業に常駐しているファンドのメンバーが議長を務めるミーティングの場で、意見を求めても沈黙して無視されるようなことが繰り返されたりもします。
そんな逆風の中でも、ファンドと対象企業が同じ方向に針路を取って頑張れるよう、PEファンドのプロフェッショナルたちは力を尽くすのです。
PEファンドの4つのテーマ・手法
PEファンドが手がける主な投資のテーマや手法には、「事業承継」「カーブアウト」「ロールアップ」「企業再生」の4つがあります。
ここでその手法と代表的な事例を簡単に紹介しましょう。
◎事業承継:コメダ珈琲店
オーナー経営者の高齢化に伴う中小企業の事業承継は、地方を含めた社会的な課題です。PEファンドが新たな経営者を招聘することにより、オーナー社長主導で動いていた会社を組織的に動ける会社として再スタートさせます。
事例としては、コメダ珈琲店がよく知られています。2008年に、アドバンテッジパートナーズが創業者から約8割の株式を購入し、当時、名古屋を中心とした東海地方に展開していた店舗を全国展開させました。
◎カーブアウト:アリナミン製薬
カーブアウトは経営を立て直すため、本業ではない事業を切り離していく投資手法です。
PEファンドは単に事業部門を別の会社に売却するのではなく、社員を新たな経営者に指名したり、あるいは必要に応じて外部から経営者を招聘したりして、その事業部門を1つの新しい会社として独立させます。
最近のカーブアウト事例としては、武田薬品工業からアリナミンの事業をスピンアウトさせ、アリナミン製薬として独立させた案件があります。これを手がけたのは、アメリカ投資ファンドのブラックストーンです。