志尊淳「今の時代の中、俳優として生きる決意」 杉咲花に寄り添った『52ヘルツのクジラたち』

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最近の志尊は、以前に比べて一つ一つの人物や作品に割く時間を増やしている。かつては、俳優としての地位を築くためにさまざまな作品に出演していたが、現在は各作品に対してどれだけ時間を投資できるかを考慮し、仕事を選択している。このアプローチの変更により彼の演技や伝えたいメッセージにも変化が見られそうだ。

©2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

声なき声に耳をすませてくれる人がきっといる

「僕が演じた岡田安吾とすべてのトランスジェンダー男性が同じ感情を持っているわけではないと思います。どんなに寄り添おうとしても、意図せずに他人を傷つけてしまう瞬間があることを認識しています。しかし、知らなければ理解できないことも多いため、つねに学び、寄り添って理解しようとする姿勢を大切にしています」

例えば、自分と異なる価値観に遭遇した場合、あなたの対応はどうなるのか? その価値観を拒否し目を背けるのか、それとも理解を深めようと試みるのか。未知の世界への興味をかき立てるとき、物語が新たな視点を提供する可能性があると志尊は信じている。

©2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

「ハリウッドでは、アカデミー賞ノミネート作品における多様性に関する規定があるように、もっと広く理解を深める必要があると考えています。LGBTQ+に関する作品が増えている今、なぜ理解が進まないのか、その原因を自問するきっかけになりました。この作品を通じて実際のトランスジェンダー男性やトランスジェンダー女性が直面する日常を役者としてできる範囲ではありますが、体現したいと思って演じています。僕の目的は、何かメッセージを伝えることではなく、岡田安吾という人物を知ってもらうことです」

これらを言葉で説明すると、「綺麗事に聞こえがち」という難しい課題も理解している。それでも、幅広い層に作品が届いてほしい。特に学生に観てもらいたいと語る。

「僕は、これまでにさまざまなLGBTQ+当事者の役を演じてきた中で、多くの方々にインタビューする機会がありました。すべての方がそうだとは言いませんが、ほとんどの人がカミングアウトのタイミングや、一人で抱え込んでいた期間が長ければ長いほど、深い傷を負っている。特に、“学生時代に傷ついた”という経験を多く聞くことがありました。

でも最近は、多様性を受け入れることができる社会に変わりつつある。その中で人々が互いに寄り添い、声にならない叫びに耳を傾けることがとても大切だと思います。この理解と共感があれば、救われる人がきっとたくさんいる。だから、学生に限らず、若い方に観ていただくことで少しでもキッカケになればいいなという思いです」

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