志尊淳「今の時代の中、俳優として生きる決意」 杉咲花に寄り添った『52ヘルツのクジラたち』

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「夢を持ち続けることが何よりも重要だと思っていて。シンプルですけど、作品を通して人々に何かを伝えたい。メディアの在り方や情報の出口が変わってきている中で、何が正しいかをつねに探求しています。SNSの普及により、テレビが主流だった時代と比べて、今は多様な情報にアクセスでき、それを自分の考えで判断できる時代。俳優として、自分の思いを伝えることも大切ですが、それ以上に、作品を通して何を届けるかを選択し、それに取り組むことが重要だと感じています」

本屋大賞受賞『52ヘルツのクジラたち』が実写化

©2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

そんな志尊が挑んだ作品が映画『52ヘルツのクジラたち』だ。タイトルの“52ヘルツのクジラ”とは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴くクジラのこと。仲間に声をかけられないため、世界で一番孤独だと言われている。

志尊が演じるのは家族に人生を奪われてきた主人公・三島貴瑚 (杉咲花)の声なきSOSを聞き取り、救いの手を差し伸べる塾講師の岡田安吾。安吾は、生まれたときに割り当てられた性別は女性で、性自認は男性である「トランスジェンダー男性」として深い孤独を抱えている。

「この作品はさまざまな社会問題を取り上げていますが、岡田安吾役として挑むにあたり特に重視したのは社会問題そのものよりも、個人(岡田安吾)に深く寄り添うこと、そしてその表現を深く追求することでした。物語や個人の感情に深く寄り添うことができれば、観る人が自然と関心を持ち、さらに調べてみたいと行動に移すキッカケが生まれるかもしれない」

(撮影:長田慶)

「その人物はどのように生きているのか?」という内面的な側面に深く寄り添い、理解することに努めた。特に、トランスジェンダー男性を演じるにあたり、誤解を招く表現にならないよう細心の注意を払った。トランスジェンダー当事者である俳優・若林佑真にトランスジェンダーをめぐる表現の監修に入ってもらい、全シーン、全セリフ、一緒に向き合い二人三脚で岡田安吾という役を作り上げていった。

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