「裸になって向き合った」ハンセン病回復者の人生 新作ドキュメンタリー「かづゑ的」熊谷監督に聞く
――これまで戦下のアフガニスタンや原爆の被爆者、炭鉱事故といった社会問題に目を向けてこられました。今回、ハンセン病の回復者を撮ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
2015年頃、信頼している知人から「どうしてもあなたに会わせたい人がいる」と言われ、そこで初めて宮﨑かづゑさんのことを知った。
彼女が84歳の時に出版した『長い道』という本がある。これを読んだ時の衝撃は大きかった。ハンセン病回復者が書く本は、差別のひどさに重きを置くものだと思っていたが、かづゑさんは、いかに自分が家族に愛されて育ったかに重きを置いていた。
初めて対面した時、「この人は絶対に撮っておかないといけない」と確信した。翌2016年から、長島愛生園に通い始めた。
波長が合った
――回復者の中には差別や偏見をおそれ、顔を出すことに強い不安を感じる方がいまだに多くいます。撮影の許可を得るにあたり、難しさはありましたか。
あっけらかんとした感じで了承してくれた。波長が合ったのだと思う。知人を通して頼んだ時、かづゑさんは「あの人ならいいわ」という一言だったと後から聞いた。マスコミの取材はほとんど受けない方として知られていたが、私はハンセン病問題については素人。知識や思い込みがないという点が、かづゑさんには安心できたのかもしれない。
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