朝、ベッドからデスクへ10秒で“出勤(移動)する”と、山根さんはバーチャルオフィスシステム「ワークウェルコミュニケータ®」を立ち上げ、デザイン担当のリーダーと1日のスケジュールを確認した。
このシステムでは、机の横にあるスピーカーから、まるでオフィスにいるかのように声や音が聞こえてくる。チームメンバーと打ち合わせしたい場合は、声がけによってオンライン上の会議室に集まることができる。
2009年、同社は独立行政法人情報通信研究機構(NICT)からの助成金とOKI研究開発センター(当時)からの技術協力を得て、ワークウェルコミュニケータ®を独自開発した。当時から音声だけとしており、映像は検討されていない。障害のある人は上半身の着替えが難しい場合もあるからだ。
開発に携わった事業部第一チーム、チームマネジャーの加藤哲義さんは、「在宅勤務にはどうしても『孤独感』『孤立感』が伴いますが、(このシステムだと)『仲間と一緒に仕事をしていると感じるようになった』と言われるようになりました」と話す。
同社では利益を追求せずに販売もしている。
税金を使った障害福祉サービスが問題?
2つめの「重度訪問介護サービスを就労・修学・通勤・通学のときにも使えるように」という要望は、2006年障害者自立支援法成立のときから障害者団体が取り組んできた。2019年、れいわ新選組の舩後靖彦参議院議員と木村英子参議院議員がこの課題について発言したことで、一時は注目を浴びたが、現在も実現していない。
その理由を舩後議員は、こう説明する。
「厚労省は、障害者雇用促進法により企業側に合理的配慮を義務化しています。それにもかかわらず、公的な障害福祉サービスで代替えすることになるのではないかと疑問を抱いています。 さらに、経済活動(個人の利益)のために、税金を使って障害福祉サービスを利用することへの社会通念上の懸念についても、配慮しているのではないでしょうか」
これらの問題を解決するため、2020年、厚労省は、障害者雇用促進法による職場介助・通勤援助の助成金制度に、福祉施策による重度障害者等就労支援特別事業を組み合わせた。「重度障害者等就労支援特別事業(*3)」という。 しかし、導入自治体が多くないばかりか、使い勝手が悪いという評判が立っている。
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