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重度障害者の就労を阻もうとする厚生労働省の愚 れいわ新選組・天畠大輔議員が語る「労働の価値」

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現行制度の問題点とは。

参議院で質問をする天畠大輔議員(写真:天畠大輔参議院議員事務所)

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病気や事故で深刻な障害を負い、食事やトイレなどでつねに介助を必要とする人が利用する重度訪問介護(重訪)。全国で約1万2000人が利用する障害福祉サービスの1つだが、厚生労働省は就労中の支給を認めていない。
そのため重度障害者が働こうとすると、自身か勤務先の企業がヘルパー代を負担することになる。そのハードルは高く、就労の道が実質的に閉ざされている。現行制度の問題点について、自身も四肢マヒなどを抱え、介助付きで政務に取り組む天畠大輔参議院議員(れいわ新選組)に聞いた。
なお、天畠議員は自力で発声できないため、腕の動きでヘルパーに言葉を伝える「あかさたな話法」と秘書による文書の代読を併用してインタビューに答えた。

※2024年2月16日(金)10:00までは無料で全文をご覧いただけます

――重訪が就労に利用できない現状について、どう受け止めていますか。

人権侵害だ。重度障害者には、日本国憲法第27条で保障された「勤労の権利」がないのが現状だ。改善するための政策目標の年限設定もなく放置されている。「仕事」という社会参加の大きなきっかけを奪われ続け、当事者の社会的孤立を深めていると思う。

――国が就労中の重訪利用を認めない根拠は、「経済活動に係る外出には支給しない」と定めた2006年の厚生労働省告示第523号です。なぜ国はこのような考え方なのでしょうか。

予算の問題が壁になっているのだろう。

重訪の費用負担は国が50%、都道府県と市区町村が25%ずつ。ただし、国の負担額には上限があり、超過分は市区町村が支払う。就労する人に支給を認めれば、通勤時の移動支援で費用が加算される。また、重訪を使わずに働いている重度障害者も一定数はいる。その人たちの利用も増える。

重度障害者は後回し

――とはいえ重訪の利用者はつねに介助を受けています。ヘルパーの派遣場所が自宅だろうと職場だろうと、サービスを行っていること自体に変わりはありません。そこまで大きな費用増にはつながらないと思うのですが。

それだけ重度障害者の問題は後回しにされているということだ。現行制度の背景には、障害者に対する差別的な考えが残っていると思う。 

医療技術や福祉制度が発達し、昔に比べて重度障害者が地域で生きられるようになってきた。普通校への通学や大学進学、1人暮らしが段々と実現している。バリアフリーやICTの発達、コロナ禍でのテレワーク普及によって、社会参加する環境もできつつある。つまり社会は変化している。

しかし、この変化に対応するための政治的、社会的なパワーが足りない。(内閣府が設置した有識者会議の)「障がい者制度改革推進会議総合福祉部会」は、2011年に「重訪の利用に関して一律にその利用範囲を制限する仕組みをなくす。また、決定された支給量の範囲内であれば、通勤、通学、入院、1日の範囲を越える外出、運転介助にも利用できるようにする」と提言した。

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