有料会員限定

介護業界に風穴開けたSOMPOケアの実証実験 政府が規制緩和の根拠とした結果は正しいのか

✎ 1〜 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 最新
拡大
縮小

「入居者3人に対し1人以上の介護職員」が義務づけられていた。

歩く高齢者を補助する介護職員
写真はイメージ(写真:8x10 / PIXTA)

特集「介護 異次元崩壊」の他の記事を読む

今は当たり前のように使える介護サービスだが、職員不足に歯止めがかからず、これまでにないレベルの崩壊が起きている。
『週刊東洋経済』2月17日号の第1特集は「介護 異次元崩壊」だ。「自宅で最期まで」――。10年後は、そんな希望はかなわないかもしれない。
週刊東洋経済 2024年2/17号(介護 異次元崩壊)[雑誌]
『週刊東洋経済 2024年2/17号(介護 異次元崩壊)[雑誌]』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。定期購読の申し込みはこちら

「風穴を開けた」──。

介護業界大手の間で昨年から興奮気味に語られているのが人員配置基準の緩和だ。これまで介護施設の人員配置は3対1、すなわち入居者3人に対して最低1人以上の介護職員をつけることが義務づけられていた。

それが2024年度からは、ICTを導入するなど一定の条件を満たした施設については3.33対1に緩和される。経営サイドにとっては人件費を削れる好材料になる。

政府が規制緩和をする根拠にしたのは23年、業界大手のSOMPOケアが行った実証実験だ。全国12の施設で、入浴支援装置や情報連携ツールなどのICTを導入し、前後の業務時間を比較した。

業務時間は導入前の76%に減少

結果、ICT導入後の業務時間は導入前の76%に減少。3.27対1で対応できると結論づけた。

これが国の基準3対1の壁を打ち破ったと喝采を浴び、政府の決断を引き出すことになった。だが、SOMPOケアの実験が真に“成功”といえるのかは、実は微妙だ。

下の図は、SOMPOケアの実証実験結果について厚生労働省がまとめた報告書に掲載されたものだ。介護職員の担う業務時間が76%まで減少したことを示し、短縮された24%分の内訳を示している。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
介護 異次元崩壊
職員不足に歯止めかからぬ"介護業界の窮状"
これまでにないレベルの崩壊が起きている
ヘルパーが消え、サービスを受けられなくなる日
訪問介護の報酬減には「怒り通り越して"あぜん"」
老健局長の間隆一郎氏インタビュー
22人に1人で対応、コールが鳴りやまない
事業所の倒産相次ぎ、2023年は過去最多を更新
上がり続ける介護保険料、増える利用者負担
身元保証代行サービスはトラブルが続発
血管を詰まらせ死亡する例が繰り返し報告
「前歯を折られた」「派遣の質はよくない」
「自力でトイレへ行けるようになったら応募して」
れいわ新選組・天畠大輔議員が語る「労働の価値」
「介護サービスが過度に市場化された」
ベイン、MBKパートナーズ、日本産業推進機構…
政府が規制緩和の根拠とした結果は正しいのか
訪問看護を行う事業所数は10年で倍増!
「掲載料を払うまで電話をかけ続けるよ」
「薬で動けなくする」「部屋に閉じ込める」
高齢者虐待を繰り返す施設の特徴
申請の前からさまざまな手を打つことが肝心
特養、老健、サ高住、グループホーム……
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内