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「汚れおむつ使い回し」特養で起きた虐待の真相 高齢者虐待を繰り返す施設の特徴

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調査資料には目を疑うような言葉が並ぶ。

必要なおむつ交換をしなかったという関係者の証言。東洋経済が豊橋市に情報公開請求をし入手した虐待の調査資料(記者撮影)

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今は当たり前のように使える介護サービスだが、職員不足に歯止めがかからず、これまでにないレベルの崩壊が起きている。
『週刊東洋経済』2月17日号の第1特集は「介護 異次元崩壊」だ。「自宅で最期まで」――。10年後は、そんな希望はかなわないかもしれない。
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介護施設での高齢者虐待は毎年過去最多を更新し続けている。2023年に虐待が発覚した特別養護老人ホーム「つつじ荘」は、愛知県豊橋市が運営する公営施設だ。施設はすでに改善計画書を市に提出しているが、それで組織の体質は改善されるのだろうか。

東洋経済が入手した豊橋市の調査資料には、目を疑うような言葉が並ぶ。

「くそ、漏れてるじゃないか」

「呪いをかけてやろうか。死んだ方がいい」

これは豊橋市が2023年10月に行った関係者への聞き取り調査記録の一部で、ある職員の入所者に対する言動だ。「おむつをしている入所者にその場ですればいいと言った」という証言もある。

市は、おむつ交換が必要な人を放置して衣類が濡れるほど失禁させたことや、入所者の衣類の袖を縛って手指が動けないようにしたことを虐待と認定した。市への通報内容には次のような記述がある。

「多動で落ち着きのない入所者を動けないように、車いすの前輪を上げていた。明らかに危険」

「ベッドを壁につけ、反対側には2点柵を付け降りられないようにした」

時期は「16年前」とあるが、「入所者の顔から流血し、床に血液の付いた足跡があった」という通報内容もあった。

半数以上の職員が関与

今回の調査結果では虐待を行ったとされる職員は3人とされる。しかし、その1カ月前の9月末に行われた市の調査では、職員の半数以上に当たる17人が関わる虐待が判明していた。施設は2022年と2023年の夏場にエアコンが故障したことから入所者をロビーで生活させていた。人前で排泄をさせたり、仕切りのない状態でおむつ交換をしたりしていたことが性的虐待と認定された。

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