電動車いすの女子高生が「就業体験」で見た"光景" 障害のある人の就労を考える企業の取り組み

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舩後議員が障害者団体などから聞き取りをしたところ、この制度を利用した場合、介護派遣事業所が3種類(国の障害福祉サービス、市区町村の特別支援事業、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)の請求業務をこなす必要があり、事務作業にかなりの負荷がかかることがわかった。

どうして、こんなことになったのか。舩後議員は「つまり、財政上の問題です」と話す。

舩後議員は「障害の有無にかかわらず、社会参加の一環として働いて自己実現し収入を得ること、納税者として社会に還元することは人として当たり前の権利であり、そのために必要な介助は保障されるべき」と訴える(写真:筆者撮影)

財政上の問題とは、重度訪問介護だけでなく、同様に利用制限のある視覚障害者の同行援護や、知的障害者の移動支援が通勤・就労・通学・修学に使えるようになると、利用者・利用時間数が大幅に増えるからだ。

「財務省に押された厚労省が、このようなキメラのような複雑な制度にしてしまった」 と舩後議員は説明する。

この状況を打開するため、2022年、舩後議員は国会で「人の一連の行動を経済活動と、生活・生命の維持活動に切り分けようとしている制度設計に無理があります。人の営みを制度に合わせるのではなく、制度を人に合わせるべきです」と発言した。

舩後議員が国会議員を目指したのは、「どんな障害があっても難病でも、自分の可能性は無限大であると信じられる社会をつくりたいと考えたから」だ。「憲法や障害者基本法で認められた自由な労働の権利、社会参加の権利を実現していきたい」と、舩後議員は視線で文字盤を追いながら、介助者を通して取材に答えた。

当事者からの言葉を1つひとつ受け止めることで、インクルーシブな社会が成熟していく

*1 東京都では、特別支援学校が依頼する事業所等での就業体験はその位置づけや名称がさまざまであるため、「インターンシップ」の名称で統一している。https://www.shugaku.metro.tokyo.lg.jp/File/syuurousien/leaflet.pdf
*2 文部科学省,特別支援学校(高等部)卒業後の状況調査,学校基本統計,平成30年度(なお、最新版の令和5年度は4.5%、就職者等常用労働者、無期・有期雇用労働者合計)
https://florence.or.jp/news/2023/03/post59652/
*3  「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000675279.pdf
参考:『日本でいちばん働きやすい会社』(土屋竜一、中経出版)
福原 麻希 医療ジャーナリスト

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ふくはら まき / Maki Fukuhara

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)修了(システムデザイン・マネジメント学修士)。週刊誌記者を経て独立し、医療・健康・介護に関する記事を雑誌やインターネットサイト、単行本で執筆。著書に『がん闘病とコメディカル』(講談社)、『チーム医療を成功させる10か条-現場に学ぶチームメンバーの心得-』(中山書店)で「チーム医療」に関する研究で講演多数。スペイン語絵本翻訳『きみは太陽のようにきれいだよ』(童話屋)、介護福祉士の資格も。ホームページhttps://makifukuhara.com/ 得意な料理は茶碗蒸し。

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