死んだアフリカ象の腸に潜った獣医が「見たもの」 体長7メートル、臓器もスケールが全然違った

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「アフリカゾウを解剖できる」というぼくたちの胸のときめきを、強烈な臭気が上塗りしていきます。

消化管がパンパンに膨らんでいたのは、内部で大量のガスが発生していたからです。

ゾウは草食動物ですが、本来、動物にとって草を消化することは容易なことではありません。なにせ哺乳類は、草の繊維質を消化する酵素をもっていないのです。

そのため、特に草食動物では、消化管内に膨大な数の微生物を住まわせ、その微生物に草の繊維質を発酵分解させてエネルギーを得ています。この発酵分解の過程で、消化管の中では大量のガスが産生されます。

ゾウが死んでも、体内の微生物がすぐに死ぬわけではありません。とりわけアフリカゾウのような大型動物では、死後も体温はなかなか下がりませんから、温かな消化管内で微生物による発酵が進行します。発生するガスと強力な臭気は、この発酵の産物です。

ぬるぬると滑る内臓と格闘

とにかく消化管を外に出さないことには、解体作業が進みません。壮絶なにおいの中で何も考えないようにして、ぬるぬると滑る内臓と全身で格闘します。

アフリカゾウの解剖
(イラスト:秦直也)
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