「幼児教育」が人生を変える、これだけの証拠

ノーベル賞学者が教える子の能力の伸ばし方

恵まれない子供の幼少期の環境を充実させる数々の研究では、家庭環境の強化が子供の成長ぶりを改善することを示し、改善の経路として非認知的スキルの役割が重要であることが示されている。非認知的スキルとは、肉体的・精神的健康や、忍耐力、やる気、自信、協調性といった社会的・情動的性質である。

最も信頼できるデータは、恵まれない家庭の子供を対象に、幼少期の環境を実質的に改善した複数の研究から得られた。中でもペリー就学前プロジェクト、アベセダリアンプロジェクトという2つの研究は、無作為割り当てを使用し、子供が成人するまで追跡調査したことから、極めて意義深い。

幼少期の教育は、学力だけでなく忍耐力も高める

これらの研究では、幼少期の環境を豊かにすることが認知的スキル(IQテストや学力検査などによって測定される能力)と非認知的スキルの両方に影響を与え、学業や働きぶりや社会的行動に肯定的な結果をもたらすことが示された。しかも、そうした効果はずっと後まで継続する。

ペリー就学前プロジェクトは、1962年から1967年にミシガン州で、低所得のアフリカ系58世帯の子供を対象に実施された。就学前の幼児に対して、午前中に毎日2時間半ずつ教室での授業を受けさせ、さらに週に1度は教師が各家庭を訪問して90分間の指導をした。

指導内容は子供の年齢と能力に応じて調整され、非認知的特質を育てることに重点を置いて、子供の自発性を大切にする活動を中心としていた。教師は子供が自分で考えた遊びを実践し、毎日復習するように促した。復習は集団で行い、子供たちに重要な社会的スキルを教えた。就学前教育は30週間続けられた。そして、就学前教育の終了後、これを受けた子供と受けなかった対照グループの子供を、40歳まで追跡調査した。

アベセダリアンプロジェクトは、1972年から1977年に生まれた、リスク指数の高い家庭の恵まれない子供111人を対象に実施された。実験開始時の対象者の平均年齢は生後4.4カ月だった。プログラムは年間を通じて行われ、子供が8歳になるまで継続された。子供たちは21歳まで継続して調査され、30歳時点の追跡調査が2012年初めに実施された。

ペリー就学前プロジェクトでもアベセダリアンプロジェクトでも、実験グループの子供が対照グルーブの子供と比較してよい結果を得るというのが一貫したパターンだった。ペリー就学前プロジェクトの被験者になった子供は、当初はIQが高くなったが、その効果はしだいに薄れて、介入が終了して4年経つとすっかり消えた。

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