内陸県に海を思わせる「八潮市」地名のナゾを追う 住民が守った日本唯一の地名"垳"は何と読む?

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ハラルフードを扱う食料品店とフードコートが同じ建物に入った施設で、筆者も1度行ってみたが、周囲では日本語はほぼ聞こえず、ちょっとした海外旅行気分を味わうことができた。

こうした東アジア圏とは異なる外国人コミュニティが見られ、また気軽にアクセスできるというのは大変面白い。

八潮市の今後は

では、今後八潮市はどのようなまちとなっていくのだろうか。

将来を考える中では2005年に開業した、つくばエクスプレスの存在は欠かせない。2005年までの八潮市は他自治体を通る鉄道沿線に広がる住宅地の外縁あるいは工業地域として発展し、2005年以降は、つくばエクスプレス沿線を中心に人口を伸ばした。

しかし、現状の八潮市は同じつくばエクスプレス沿線の流山市やつくば市周辺と比べると、新築住宅の広がりが弱く、東京都心直結のポテンシャルを生かしきれていないようにも見受けられる。特に八潮駅周辺はまだ住宅地としての開発・再開発の余地がある。

中でも工場・倉庫群については、集合住宅用地としてのポテンシャルは大きく、住宅需要によっては今後、集合住宅に変わっていくこともあり得るかもしれない。

八潮駅から少し離れたエリアにある倉庫・工場街
八潮駅から少し離れたエリアにある倉庫・工場街。今後宅地化していくかもしれない(写真:筆者撮影)

また、つくばエクスプレス開業前に発展していった住宅地がどうなるかも気になるところだ。駅から遠い郊外住宅地は近年空き家問題も注目されている。そうした時代の流れの中、市内でも八潮駅周辺とは異なる別ベクトルの変化が起きていくことが予想される。

いずれにしても、今後、八潮というまちの風景がどのように変化していくのか。東京郊外でも非常に興味深い場所の1つであろうことは間違いない。

鳴海 侑 まち探訪家

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なるみ ゆう / Yu Narumi

1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やX(旧・Twitter、https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。

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