今のニュースメディアに欠けている機能とは何か 「情報を提供するだけ」では未来はない
藤村:とはいえ今情報があふれているので、限られた時間でザッザッとザッピングできる、つまり”信頼できる要約”にはそれなりに価値があります。今の若い人たちの多くは、長文に耐えられない。でもその人たちが誰に頼るのか、という課題がいずれ顕在化します。その役割を新聞が担うと言い切れるほど僕は楽天的になれませんが、新聞にも可能性はあると思います。
ただ、ここから怖いストーリーも考えられる。”信頼できる要約”を生成AIがやることになるかもしれない。つまりカスタマイズされた生成AIであるマイAI君に頼んで、「時間がないから今重要なニュースを教えてよ。5分でわかるように情報整理して」と問いかけると、5分で説明してくれるわけですよ(笑)。
ネット上ではテレビのニュースが人気化
柳瀬:短時間でインパクトのある情報を伝える、という点では映像に注目する必要があると思います。
私が教鞭を執っている東工大の学生の場合、この数年の間に登場したテレビ局による映像付きテキストメディアが新聞サイトより多く見られている。アンケート調査をしたところ、NHKニュースウェブ、フジテレビFNNプライムオンライン、TBSニュースディグなどテレビ局のウェブメディアは、新聞や雑誌のウェブメディアの2倍以上見られていました。
映像はテレビ局の独壇場です。一方、テキストは新聞や雑誌だけではなくテレビ記者でも作れるわけです。ネット上ではテレビのニュースが若い人に見られやすい。非常にシンプルなことが起きちゃっている。
坪田:情報は指数関数的に増えている。その中で信頼できる情報とは何なのかを判断することには、大きな市場価値があると思う。
今はオールフラット(全員が平等)ということをベースにしてものを考えているけど、ある種の階層化が進んでいくと思う。それをどういう形のプラットフォームにしていくのか。誰かが思いついてサービスを始めたら面白いことが起こりそうな気がします。
松井:現状では、オールフラットを志向し続けると思います。今の日本の新聞社としては、一覧性があって、どんなニュースが起きているのかをちゃんと知ってほしいという考えがまだまだ強い。個々人がそれぞれの興味だけを突き進めてしまうと共通の知識や理解が失われ、民主主義の根幹が揺らぐという懸念を、新聞社は持っているからです。
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