今のニュースメディアに欠けている機能とは何か 「情報を提供するだけ」では未来はない
メディアの究極の目的とは?
校條:まずは日経電子版の「生みの親」とされる坪田知己さんから、現在のニュースメディアの課題について問題提起をお願いします。
坪田:私が1993年に日経社内で「未来は電子新聞だ」と断言したのは、情報の本質から言って、紙によるニュース伝達は読者を裏切ることになるという確信があったからです。
「情報とはそもそも何なのか」というと、情報は、行動のネタなのです。そのまえに判断=意思決定がある。ちゃんとした情報がないと意思決定を間違ってしまう。だから正確で早い情報取得が必須になる。とくにビジネスの現場はそれを求めています。
つまり、メディアというのはデシジョンサポートシステム=DSSなのです。メディアの究極の目的は意思決定の最適化です。これ以外ない。その意思決定のスタイルが大衆レベルから個のレベルに移っている。
日経が先行したのは、経済は、何かが起こったら、株価が動く。昔は、印刷に頼るレベルでよかった。しかし、今は、リアルタイムで知らないといけない。例えばイスラエルとかウクライナの情勢がどうなっているのか。事態が動いた瞬間に世界中の株価が連動する。経済ニュースは今のネット時代に相性がいい。だから日経が先行できることは明白でした。
「協考」という私がつくった言葉があります。「コラボレーション=協働」って言葉がありますが、働くではなくて、一緒に考える=協考のメディアというのをつくらないといけない。そういう広場、議論する広場をつくる必要がある。それは一般のメディアがチャレンジするべきテーマだろう。面白い問題提起をして、勘のいいファシリテーター(中立的な立場で多様な意見を整理する人)がついて、質の高い議論と、よりよい合意形成をできたら面白い。
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