アップル「美しいニュースアプリ」の衝撃 「News」が変えるデジタルニュースの表現

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短期的に見ると、「News」アプリは、同カテゴリのアプリの競争において、あるいはニュースビジネス、メディアビジネスに対して、必ずしも巨大な影響を与えるわけではない。しかし、長い目で見ると、アップルはディスプレイに表示されるデザインの標準を引き上げるという点に置いて、一定のインパクトを与えていく可能性がある。

今回アップルは、iOS 9で、特にiPadにおいて、画面を分割して複数のアプリを同時に表示・操作できる「マルチタスク」機能を実装した。つまり、これまで縦長・横長のどちらかしかなかったiPadの画面に、iPhoneのような幅の細いアプリ表示や、画面を半分に分けた通常と異なる幅のアプリ表示が行われるようになる。

前述のレスポンシブウェブデザインの世界、あるいはデバイスのサイズが異なるAndroidの世界では全く新しい話ではない。iPadの世界においてアプリが様々な幅で表示されるというのは、大きな変化と言える。

アップル News Formatとそのツールは、これまでの常識が変化するアプリだけでなく、コンテンツについても、より簡単に、複数のサイズの端末に対応でき、レイアウトデザインにこだわった記事の作成を実現する面白いアプリケーションになるかもしれない。

日本語対応はどうなるのか

日本のメディアについての対応は今のところ、アナウンスはされていない。フォント対応についても明らかになっていない。

Newsアプリでは、欧文に関しては、カスタムフォントを用いて、文字そのものにまでこだわることができるという。しかし日本語には、縦書きやルビなど、レイアウトデザインにこだわればこだわるほど、乗り越えるべき文化の違いが大きく横たわっている。

ただ、筆者は日本語での対応に関しても、アップルはこだわり抜くのではないか、と期待している。Newsアプリを含むiOS 9と同時にWWDC15で発表されたMac向け次期OS X El Capitanには、これまでのヒラギノシリーズに加え、「クレー」「筑紫A丸ゴシック」「筑紫B丸ゴシック」「游明朝体+36ポかな」という4書体が新たに加わる。

ひらがなにこだわりをもつ書体が追加されたことは、日本語を美しく表現する能力を高めてくれる。また既存のヒラギノ角ゴシックも、3つのウェイトから大幅に増えるという。これらのフォントがiOS 9に含まれるとなると、Newsアプリのなかで利用できる可能性も高まり、日本語対応が行われた際のこれまでにない表現力を備えてくれそうだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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