戦術の使い手、信長にあって義経になかった視点 歴史の偉人に学ぶ「戦術」の遂行に必要なもの

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義経と違い、信長のやり方を多くの部下たちは支持しました。なぜならば信長は、部下が納得するまできちんと、説明をしたからです。

あなたがリーダーとして新しいことを始めるときは、必要以上にていねいにその意義や方法をメンバーに説明してください。たいていの人は、新しいことをやることを嫌います。

そういう人たちを納得させることができなければ、いくら優れた戦術でも、その効果は半減してしまうものです。

部下に戦術を決めさせた家康

最初に戦術を立てるのはリーダーと参謀ですが、実行するのはチームのメンバー全員です。メンバー全員が戦術の目的・手順を正しく理解し、共有していなければ、戦術の内容いかんにかかわらず、目的を成就させることは難しいでしょう。

徳川家康は、戦術を決める際に、チームメンバーと何度も議論を重ねました。家康はかつて三方ヶ原の戦いにおいて、周囲が籠城を勧めるなか、独断で出陣を決め、武田信玄に完膚なきまでにたたきのめされた経験があります。

1人の人間の知恵と判断力には限界があることを痛感した家康は、知恵を出し合い、討論し、納得することが大切だと学んだのでした。

家康は重臣や中堅を集めて、皆で議論をさせます。自分の中に、すでに確固たる戦術ができ上がっていても、一切、家康は口出しをしません。とにかく、みんなに「どうすればいいか?」と問いかけます。議論が進み、意見が出尽くした頃合いをみて、家康は自分に一番近い意見を選びます。

「ワシは◯◯の意見が良いように思う」

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といった具合に。自分も最初からそう思っていたとはいわず、あくまで家臣たちの意見を採用した、という形をとるのです。

そうすれば、家臣たちは自分たちの案が採用されたと思って喜び、頑張って戦おうと決意するはずです。さらに議論したおかげで、戦術についてしっかり理解しているから、戦場でもスムーズに作戦を遂行することができたのです。

ビジネスの現場では、家康とは真反対に、「こうやることに決めたのでしっかりやってくれ」と、一方的に部下に進め方を伝えるリーダーのほうが多いかもしれません。

理解度も、やる気も足りない部下たちが失敗すると、彼らの力不足のせいにしているリーダーは、もう少し戦術の決め方や伝え方を考えたほうがいいように思います。

加来 耕三 歴史家、作家

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かく こうぞう / Kozo Kaku

歴史家・作家。1958年大阪市生まれ。奈良大学文学部史学科卒業後、同大学文学部研究員を経て、現在は大学・企業の講師をつとめながら、独自の史観にもとづく著作活動を行っている。『歴史研究』編集委員。内外情勢調査会講師。中小企業大学校講師。政経懇話会講師。主な著書に『日本史に学ぶ一流の気くばり』『心をつかむ文章は日本史に学べ』(以上、クロスメディア・パブリッシング)、『「気」の使い方』(さくら舎)、『歴史の失敗学』(日経BP)、『紙幣の日本史』(KADOKAWA)、『刀の日本史』(講談社現代新書)などのほか、テレビ・ラジオの番組の監修・出演も多数。

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