日本人は「戦略」(政治やビジネスなどを実行するための計画・方法)が好きな民族のように思われます。その割には、「戦術」(争いに勝つための方法)を軽視する傾向が強い。
しかし、当初に立てた「戦略」を遂行するために、刻一刻と移り変わる戦局にあって、積み重ねる作戦が「戦術」です。現場で作戦を遂行するリーダーに、なくてはならない能力といっていいでしょう。
戦術を学べば、今後、新規プロジェクトなどを進めるときに、間違いなく成功の確率が上がるはずです。戦い方、物事の見方、チームワーク活性化の必要性などについて、歴史家で作家の加来耕三氏の新刊『リーダーは「戦略」よりも「戦術」を鍛えなさい』をもとに、3回にわたり解説します(今回は2回目)。
戦う前に相手の戦意を喪失させる
戦国時代、名前を聞くだけで相手を震え上がらせた集団がいました。
「武田の赤備え」──武者の甲冑や鎧、刀の鞘、鞍や鐙などの馬具に至るまで、すべてを朱一色に染めた武田信玄の武士団です。戦場に赤備えの騎馬隊が現れると、敵は恐怖に震え、刃を交えるどころか我先に逃げ出したという話もあるほどです。
しかし、この無敵伝説は、武田信玄の事前につくり上げたイメージ戦術の賜物でした。
実際、赤備えの部隊は武田軍の中でも精鋭を選抜して結成されており、合戦でも強かったといわれています。朱色は戦場でも目立つため、朱色=強いというイメージが刷り込まれていき、戦場に現れるだけで、ついには相手は逃げ出すようになったのです。
信玄はこのイメージをうまく利用して、戦わずして勝つ戦術を確立したのでした。
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