日本はこのまま「国家の衰退」を黙って待つだけか いまこそよみがえる、福沢諭吉からの警告

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学ぶべき西欧を見失い、なおかつ自分で考えることもできなくなった世代は、大正時代の新しい世代にも似て、もはや野心も指標をもたない世代かもしれない。それが衰退を速めているのかもしれない。

モンテスキューによれば、ローマは技術だけが残り、当面の間はそれだけでなんとか勝利を維持できたが、最後には腐敗が生じ衰退の一途をたどったという。

いかなる方向へ国の舵を取るべきか

1990年代まではなんとかそれまでの余韻で維持できたものが、2000年になって次第に衰退しはじめ、今や腐敗によって完全衰退モードに入っているのだろうか。政治や経済の分野で起こる不祥事や事件は、この衰退のほころびをより広げ、今や佳境に入っているかに見える。

日本は驚異の成長の後、脅威の衰退に進み、そして破局へ至るしかないのか。

もちろん、これは今や日本だけの問題ではなくなっている。日本の衰退の問題とは別に、数世紀世界を支配してきた西欧それ自体の衰退も進んでいるからである。

西欧においても、すぐれた政治家が排出しているとはいいがたい。むしろエリート層の能力の衰退が顕著である。そうしたエリート層では、未來へのかじ取りができるはずもない。

もう一度、福澤諭吉のあの警告を読み直してほしい。それは、「いやしくも、一国の文明の進歩を謀るものは、議論の本位を定め、この本位によって事物の利害得失を談ぜざるべからず」。

福澤は危急存亡の日本の中で、日本の人々に議論の本位、すなわちいかなる方向に舵をとるべきかを、われわれに問いただしたのである。もって知るべしなのだ。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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