日本はこのまま「国家の衰退」を黙って待つだけか いまこそよみがえる、福沢諭吉からの警告

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軍事と経済、その内容は異なるが、日本は戦前と戦後この2つの分野で世界を驚愕させてきた。それはその成長のスピードだけでなく、その衰退のスピードにおいても、まさに世界にとってこの成長は脅威であった。しかし、そこにある種の問題が含まれている。

明治維新からの国家衰退

この問題に対して、マアルーフは、こう述べている。

「歴史家の中には、創設者の世代が去り、遂行すべき明確なビジョンをもたない別の世代のものに置き換わったことで、この逸脱を説明するものがいる」(73ページ)。

 ローマ時代のように、明治の初めには優れた人材が豊富にいたというのだ。彼らは世界に目を開き、野心的であった。

ところが大正時代になり、明治維新から40年経つと、そうした人々がことごとくいなくなる。すると、そこに空虚な空間が生まれてしまった。この40年後の日本の状況は、今のわれわれからすれば遠い過去の話かもしれない。

しかし問題なのは、1945年から40年後、すなわち1985年以降の日本に関しては、今の問題である。まさに、失われた30年の言われる時代はこの時代に始まるからである。

1970年代の高度成長期の真っただ中で、自動車や電機製品などの生産で破竹の勢いをもって世界を凌駕していた日本。それはおそらく、戦争直後青年期を迎えた世代による創意工夫と野心が生み出した大いなる成果だといえる。当時の日本は世界に目を開き、野心をもっていた時代だったのだ。

ローマがそうした優れた感性を持つ指揮官を失ったことで衰退したのだとすれば、こうした世代が鬼籍に入ってしまった今の日本が衰退するのは合点がいく。

戦後西欧へ追いつき追い越せというフレーズが、経済的成長という目標につながったのだとすれば、新しく取って代わった世代は、もはやその目標を失ってしまったといえる。

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