日本はこのまま「国家の衰退」を黙って待つだけか いまこそよみがえる、福沢諭吉からの警告

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最近フランスで出版された中東出身でフランス・アカデミー会員のアミン・マアルーフ(Amin Maalouf)の書いた『迷える者の迷宮―西欧と対向者』(Le Labyrinth des égarés. L’Occident et ses adversaires,Grasset, 2023)という書物は、日本の栄光と衰退を考えるために興味ある内容を示唆してくれる。

この本の中で紹介されている非西欧とは、西欧に挑戦し、非西欧に大きな刺激を与えた国である。その非西欧の中で成功した国とは、日本、ソ連、中国、アメリカであるが、なんといってもその筆頭に来るのが日本なのである。

本書は、日露戦争(1904~1905年)の勝利がアジア各地に与えた強烈な印象から始まる。ロシアは西欧ではないのだが、白色人種であることで、有色人種日本人の勝利の衝撃は大きなものであった。マアルーフは語る。

「全世界が発見したこと、それはひとつの国民が、短い間で数世紀の遅れを追いつき、栄光へと歩み出たことであり、周辺的な、とるにたらない伝統的文化を出て、子供たちを無知と貧困から救い出し、彼らにほこりを与えたことであった」(57ページ)

それは日本という国が到達した栄光の時であった。だからこそ、非西欧地域で日本の勝利に、人々は勇気づけられたのである。

非西欧で成功した国の日本

しかし、その日本はやがてその非西欧に背を向け、アジアを侵略し、非西欧の希望の星であることを突然やめてしまう。そして1945年に、第2次世界大戦で西欧に決定的に敗北を期す。マアルーフは、この成長と発展、そして突然の方向転換を問題にする。

これと同様の栄枯盛衰を、日本は再びたどる。アジアで唯一の経済的先進国となった日本が、また突然、成長と発展に逆噴射し、失われた30年を経て衰退し続けるのである。

確かに、これはとてもミステリアスに見える。それは、恐ろしいスピードで発展すると同時に、恐ろしいスピードで衰退もするという、容易には理解しがたい謎の行動を日本がとっているからである。

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