世界の「サバ缶30種」食べ比べてみてわかったこと 日本は水煮が一般的だが、世界で多いのは

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「そう単純な話ではないんですよ」と教えてくれたのは先ほどのながさき氏。「ヨーロッパと日本では、そもそもの食文化や漁業の状況が違う。日本は魚種が多いから、そのすべてに関して漁獲可能量を定めるのは現実的でない。その代わりに、漁業を免許制にすることで入り口でコントロールをしているんです」。

なるほど確かに、ヨーロッパ北部でよく食べる魚といえば、タラとサーモンとニシンくらい。魚の漢字がクイズになるほどに魚種の多い日本とは状況が違う。とはいえ、漁業技術の向上によって漁船の隻数やトン数による制限が限界を迎えているのも事実で、2020年の新漁業法では個別割り当て方式の指定魚種も拡充していく方針が示されている。

「大きいほどいい」というわけではない

また、大きく育った魚を獲るのがよいかというと、その限りでもないという。「大きい魚をよしとするのは、肉中心の欧米的価値観で、日本やアジアの文化にそのまま押し付けられるものではない」。言われてみればその通りで、コハダは小さい時のほうが、価値が高いし、小さい魚ならではの調理法や味わい方も多くある。

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「小さい魚の味わいが評価されるようになれば、漁業者は生計を立てるために必要以上の資源を獲る必要がなくなる」。確かにその通りだ。私たちは必ずしも、お腹を満たすために魚を食べているのではないのだ。

また、食ったり食われたりの海のエコシステムの中で、どの段階で捕獲するのが資源的に効率がよいのかは魚種によっても異なり、「大きく育ててから獲るのが効率がいい」といういけす的発想がそのまま当てはまるわけでもないという。

そんな話を聞くと、しばしば小中学校で出張授業をしている私には、目の前のサバ缶が教材に見えてくる。たった百数十円のサバ缶すらも、世界の海につながる題材になるのだから、本当に日常の食卓は探検の種にあふれている。

岡根谷 実里 世界の台所探検家

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おかねや・みさと / Misato Okaneya

東京大学大学院工学系研究科修士修了後、クックパッド株式会社に勤務し、独立。世界各地の家庭の台所を訪れて一緒に料理をし、料理を通して見える暮らしや社会の様子を発信している。講演・執筆・研究のほか、全国の小中高校への出張授業も実施。立命館大学BKC社系研究機構客員協力研究員、大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)連携研究員、京都芸術大学非常勤講師。近著に「世界の食卓から社会が見える(大和書房)」。

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