紫式部が友達の人生相談に送る「心が晴れる言葉」 遠方に行くか悩む友達に、どうアドバイス?

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女友達と思われる人(親戚の娘という見解も)が式部に寄越した歌は「露深くおく山里のもみぢばに通へる袖の色を見せばや」というもの。歌中の「露」というのは、涙を表しています。

女友達は、露深い山里で涙にくれていると。友達が贈ってきた紅葉の色は真紅。私(女友達)の衣の袖の色は、それと同じであると。血の涙(血涙)を流していることを表現しているのでしょう。女友達の悲痛な叫びが聞こえてきます。

その女友達がどうして遠方に行くことになったかはわかりません。先程と同じように、父親が遠国の国司にでもなったのか、それとも夫の地方官としての赴任先が遠方になったのか。

当時の女性の生活は、実家の親が面倒を見ることが多いので、おそらく、後者の夫となる人についていくかどうか、血の涙が出るほど悩んでいたのでしょう。女友達が当時「山里」にいたのは、どこかのお寺にでも参籠していたからと思われます。

友達の性格をよく理解して歌を詠む

では、式部はこの友達の人生相談に何と答えたのか。「嵐吹く遠山里のもみぢばは露もとまらむことのかたさよ」と例により歌で答えます。

「遠山里」というのは、その女友達がいる山里のことを指します。式部は「激しい風が吹きつける山里の紅葉は、少しでも止まっていることは難しいでしょう」と詠みます。

山里の紅葉は、女友達のことを指しているのですが「あなたが、ついて行かずにとどまっていることなどないでしょう」と言っているのです。式部と友達がどれだけ深い仲かはわかりませんが、友達の性格というものを式部はよく理解していたと思われます。

理解したうえで、実は答えはもう出ているのではないですかと、暗に友達の「決断」を後押ししているようにも思うのです。

例えば、好きな人に告白することをその本人は悩んだ末にもう決めているのに「どうしよう。あの人に告白しようか、どうしようか」と友達に相談したことはありませんか?

相談する人の気持ちは、友達に自分の気持ちを後押ししてほしいものだと思うのです。式部の友達の気持ちもそれと同じようなものだと私は感じます。

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