何より、薬剤師が寝泊まりするベッドもトイレも洗面台もあるから、被災地では大前提の“自己完結”も可能となる。
2016年の熊本地震では、被災翌日には災害派遣医療チームの拠点に、大分県薬剤師会のMPが投入された。災害医療の拠点に車両を置いて運用する「拠点固定型」で、避難所を巡回する医療チームが持ち帰った処方箋をもとに調剤し、翌日に避難所の患者に届けるシステムが定着した。
災害医療での薬剤師とMPの有用性がさらに認識され、医療チームの打ち合わせに薬剤師が出席するようになったのは、この震災からだ。多くの薬剤師会だけでなく、医大や薬科大がMPを導入するきっかけにもなった。いまでは全国で約20台のMPがある。
避難所を回っていると、皆が不安を抱えている
そして今回の能登半島地震では、すでに延べ7台が派遣されているだけでなく、活用方法もさらに進化してきた。
日本災害医療薬剤師学会の会長で兵庫医科大学危機管理医学講座の渡邉暁洋・薬剤師が能登半島先端の珠洲市に入ったのは1月4日昼過ぎだった。医療支援の拠点となる市の健康増進センターには、DMAT(災害派遣医療チーム)や日本赤十字社の救護チームなどがすでに活動を始めていた。そこで課題になっていたのが医薬品だ。
医療チームは災害の初期救急に必要な医薬品は持参しているが、それにも限りがある。糖尿病など慢性疾患に必要な治療薬も少ない。
避難所を回っていると、慢性疾患薬が切れそうな人が多く、みんな不安を抱えている。風邪に効くPL錠も底をついている。だが、それら不足する医薬品を入手するルートができていない。
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