モバイル・ファーマシー(MP)という車をご存じだろうか。
正式には「災害対策医薬品供給車両」と堅苦しい名称だが、いわば移動薬局車だ。だが、市販されている風邪薬などを搭載しているわけではない。医師の処方箋が必要な医薬品を薬剤師が車内で調剤して患者に手渡す。
2011年に起きた東日本大震災の教訓をもとに宮城県薬剤師会が開発したMPが全国に広がり、今回の能登半島地震には延べ7台が動員されている。新しい医療支援の形が模索され、薬剤師ともども震災医療の担い手となっている。
東日本大震災、熊本地震を経て定着
東日本大震災当時、被災地を巡る医療チームは薬剤師を帯同していなかった。持参する薬剤がなければ、なすすべがない。
被災者の多くは、お薬手帳を津波で流されて自分が服用している薬剤名さえわからない。その場に薬剤師がいれば色や形状から類推することができるし、同じ効果の代替医薬品を医師に提案することもできる。
このときから災害医療には薬剤師が必要だと認識され、医療チームに薬剤師が帯同することが多くなった。
地元の薬剤師会役員として震災の現場を目の当たりにした宮城県の山田卓郎薬剤師(現・日本薬剤師会常務理事)が開発したのが、キャンピングカーを改造したMPだ。最大500品目の医薬品の積み込みが可能で、調剤棚や分包機や電子天びんも備えているから、その場で患者に服薬指導をしながら手渡すことができる。
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