今の戦争が終わっても、元通りにはならない理由 ケインズ著『新訳 平和の経済的帰結』(書評)

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富国と強兵
『富国と強兵』(東洋経済新報社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

第二次グローバリゼーションの30年間というものは、冷戦終結後のアメリカという覇権国家の一極体制という、極めて特異な国際環境の上に成り立っていたものであった。そのアメリカが衰退し、もはや世界秩序を支える覇権国家としての役割を果たせなくなったのであれば、その上部構造の第二次グローバリゼーションもまた終焉する(『富国と強兵――地政経済学序説』 を参照されたい)。

こんなことは、さして難しい話ではないようにも思われる。それにもかかわらず、なぜ、この政治経済学的構造が見逃されてしまったのであろうか。その答えは、『平和の経済的帰結』の冒頭に見事に書いてある。

人類の顕著な特徴として、自分を取り巻く環境をあたりまえのものと思ってしまうということがある。西ヨーロッパが過去半世紀にわたり頼ってきた経済的な仕組みが、きわめて異例で、不安定でややこしく、信頼できない、一時的なものでしかないということを、はっきり認識している人はほとんどいない。(p.2)
中野 剛志 評論家

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なかの たけし / Takeshi Nakano

1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文‘Theorising Economic Nationalism’ (Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『富国と強兵』(東洋経済新報社)、『奇跡の社会科学』(PHP新書)などがある。

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