
いまだ答えがでない第一次大戦の正しい終わり方
古典と呼ばれる本には二種類ある。出版当時はほとんど話題にもならなかったが、後に名声が高まり、時間をかけて古典としての地位を獲得した本。もう一つは、出版の段階からベストセラーになり、著者の没後も繰り返し参照されて、時代ごとに新たな解釈を呼び込む本である。
ケインズの『平和の経済的帰結』は、後者の典型と言える。ヴェルサイユ講和会議が結ばれてわずか半年後に出版された本書は、本国イギリスのみならず、世界中で翻訳されて大評判になった。講和会議を主導した政治家たちの前時代的な国際秩序観に手厳しい論評を加え、敗戦国ドイツへの過大な賠償請求を非難し、このままでは中欧諸国の不満がいずれ悪しき独裁者の台頭を招くと予言し、その暗い未来予想を覆すべくドイツへの寛大な復興支援を提言したケインズは、この後、激しい毀誉褒貶の渦に巻き込まれることになる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら